第4話 運命

 平穏な王都の街並みを黒いフードマントを被った集団が馬に乗り駆けていく。

 人々は馬に乗り掛けていく集団を何だ?と興味を示し見ながら、駆け去って行く集団の姿を見送った。



「本当に王都に来ているんですかね?」

「確かに王都に来ているはずだ。けど、もう居ないかもしれない。王子が付けている香水の香りはするんだが」


黒いフードマントを被った男はそう呟き、マントを翻し、再度、馬に跨り、仲間に『行くぞ』と声を掛けてその場から立ち去って行く。



 リディアール王国の王城リステルへと続く坂道をアリア、ミカル、ディオールの三人は歩いていた。

 晴れた空の下、王城へと続く坂道の両サイドには桜の木々が立ち並んでおり、心地良い風が吹く度に、木々が揺れ、桜の花びらが舞い落ちてくる。


「綺麗ですね」

「ああ、毎回、此処を通りたくて王都に行く者も何人かいるみたいだ」

「そうなんですね。それは、知りませんでした」


 再び三人の間に沈黙が訪れる。

 ミカルはアリアのことをもっと知りたいという思いから口を開く。


「アリア、お前は王都出身ではないのか?」


 ミカルはアリアが髪につけている髪飾りがこの辺では見掛けない物であった為、王都出身ではないのかもしれないと思い至る。

 

「あ、はい! 私は王都から離れたティゼ村という村が出身です」

「やっぱり王都出身ではなかったか。今日は何で王都に来たんだ?」

「村の長老からの頼みで、取り寄せていた茶葉を取りに来たんです」


 ミカルと出会うことがなければ、王都に立ち並ぶ店々を回れたのかもしれないが、今はそんなことはどうでも良い。こうして目の前にいるミカル、ディオールの命を自身が持つ力で救うことが出来たのだから。

 

「運命だったのかもしれない」

「ん? 何か言ったか? アリア」

「いいえ、何も」

「そうか」



 あの日、彼と出会っていなかったら、こんなに苦しい思いをすることもなかったのかもしれない。


「こうなる未来は予知できなかった。私は自分が憎くて仕方ないわ」

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