第12話 ルディアの街

 翌日。ラティアとディークは目的の地である街〈ベルン〉に早く着く為の近道として通ることを決めたフィリアント砂漠へと歩みを進めていた。


「何がお腹が空いてきたわ」

「そうですね。あと少し歩けばルディアという街があるみたいなので、そこでお昼にしましょう」


 フィリアント国の南に位置する大きな街〈ルディア〉は色鮮やかな民家が立ち並び、港も近い為、漁業、他国との貿易が盛んな街である。

 ラティアとディークがそんな街〈ルディア〉に着いたのは昼過ぎ頃であった。

 お洒落なカフェテリアに入り、一息ついていたラティアとディークの耳に後ろの席に座り、会話をしていた若い男性二人の声が届く。


「俺の従兄弟がさ、宝石病にかかってしまって、一週間前亡くなったんだ」

「そうだったんだな。宝石病って、治し方が解明されていない病だったよな?」

「ああ、身体が全て宝石になってしまったら、身体が割れるように痛みだし、最後は……」

「跡形もなく消えてしまうんだろ?」

 

 男の言葉に従兄弟が宝石病にかかり亡くなってしまったと言った男は強く頷く。ラティアとディークは頼んだパフェとパンケーキを口に運びながら、その話に耳を傾けていた。

 


 お昼を済ませ、カフェから出たラティアとディークはまた歩き始める。ディークは店内の中で話していた男二人のやり取りをラティアが気にしているかもしれないと思い、そっと隣を歩くラティアの顔色を伺う。

 そんなラティアは隣を歩くディークが、自身ラティアのことを心配して顔色を伺いながらこちらを見ているとは知らずにいた。

 

 ディークの思っていた通り、ラティアは気にしていた。それは自分が犯されている宝石の病が命に関わる極めて危険な病であると、そう再認識したからでもあり、もしも治せるという希望がなくなってしまったら、自分は近い将来、死ぬということを受け入れて、生きていかなければならない。そう改めて思い知ったからでもあった。



 その日の夕方。ラティアとディークはフィリアント砂漠に着く。


「着いたわね」

「はい。今からフィリアント砂漠に入っても、日が変わる前には着けますが、どうしますか?」

「そう、じゃあ、行きましょう」

「わかりました」


 フィリアント砂漠からラティアとディーク。そんな二人の目的の他である街〈ベルン〉までは、然程、離れていない為、今からフィリアント砂漠に入れば、日が変わる前には着くことが出来る。大体、約1時間ちょっとくらいの距離だろう。

 ラティアとディークはフィリアント砂漠に足を踏み入れた。茜色に染まる空の下、二人の影が砂漠の地にゆらゆらと揺れ動いていた。

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