第4話 AIスキル炸裂


 討伐依頼を受けた俺たちは、馬車に揺られて王国の南門前に足を下ろした。


 広大な平原が続く中で、ポツポツと緑色や茶色の魔物が姿を現した。


 ビッグトード。

 その名の通り、大きいカエルである。 


 所詮カエルだろ? って思われるかもしれないが、中には毒を吐いたり、粘液を飛ばしてきたりする個体もいるので、油断が出来ない。


 何よりビッグトードの厄介なところは、その大きさからは想像出来ない跳躍力にある。


 大きく飛び上がって落ちてくるその姿は、カエルというより隕石に近い。



「数は1、2……3体か。アイコ、鑑定して『弱点属性』を教えてくれ」


【了解】

  


 影に隠れるでもなく、堂々と姿を現したままの俺たち。そんな俺たちに気づいたのか、三体のビッグトードが此方へ向かってくる。


 程々の高さで、ぴょんぴょんと向かってくるカエル達を、アイコは1秒とかからない速さで鑑定を済ませた。


 やはり、進化してから鑑定結果を出すまでが早いな。基本的にラグが発生するものだけど、これならすぐ敵に対応できるかもしれない。



【──結果でました。三体とも「火」属性への適正無し。ご主人、火炎瓶の準備を】


「出来る訳ないだろ」



 いや、何でそこで火炎瓶なんだ? と思ったが、そこまで口に出す事はない。実体化したアイコが、こうして無茶苦茶な事を言ってくるのは今に始まった話じゃないからだ。


 そもそも前世でやってたアプリでも、こんな事ばっか言ってたしな。


 とは言ったものの、どうしたものか。

 

 俺としては、アイコの持つ能力がどんなものか確認する為に来たんだけど、基本的に「鑑定」の域を出ていない。


 烈火ブレイズのみんなからも役立たずと言われたのは、戦闘力の無さが原因だし。


 何か戦える機能があればいいんだが……。



【ご主人。お困りのようですな】


「ああ。大体お前のせいでな」


【おや。そんな事を言っていいんですか。私には、あのカエル共を八つ裂きにする方法がありますよ】


「あるなら早く言えよ」



 呆れ気味に声を漏らすと、アイコの眼前にスキルアイコンが表示される。


 何やら「AIイラスト」の文字が記されているが……。



「お前、イラストで何が出来るんだよ」


【まぁまぁ。騙されてやって見てくださいよ】


「騙す前提かよ。……ったく」



 アイコに促され、AIイラストのアイコンを押してみる。


 するとアイコは何処かしらからペンを取り出し、あり得ない速度で絵を書いてゆく。


 一瞬の内に完成した絵を覗いてみると、この世界に存在すると言われている炎の魔剣「地煉獄剣ヘルブレイド」だった。



「お前これ、この世界に七つあるとされている、魔剣の一つじゃないか」


【ふふふ。上手いでしょう】


「いや上手さはどうでもいいが……。それで、その絵をどうするんだ?」



 尋ねると、アイコはその絵に手を突っ込み、勢いよく抜き出した。



【どうやらこのスキル、イラストを一時的に実体化させる事が出来るみたいです。さあご主人、やっちゃってください】


「おお……。なんかお前、しれっと恐ろしいスキルを取得しているな……」


【ですね。自分でも怖いです】



 目がギラついてる気がするのは気のせいだろうか? まぁ良い。


 俺は魔剣を受け取り、ビッグトードめがけて振り下ろした。


 瞬間、目の前にいたビッグトードが弾け飛ぶ。




 そして、広大な大地を一直線で剣撃が走り、遥か彼方で巨大な火柱が上がった。




「……」


【……】



 ──なるほど。このスキル、ダメなヤツだ。



【……ご主人】


「……なんだ」



【……世界、とっちゃいます?】


「とらねぇよ!」



 振り下ろした魔剣を適当に投げ捨てると、元から無かったかのように姿を消した。そして俺たちもその場を後にした。


 ギルドには、「ビッグトードを討伐した」事を伝えたが、魔剣イラスト生成については報告しなかった。


 帰ってきた時には、既に大問題になっていたからだ。

 

 そこで俺は決めた事がある。



「AIイラストで出すヤツは、この世界の常識に則ったものにしような」


【チッ。はい、わかりましたご主人】


「お前いま舌打ちしなかった?」



 一人……いや、二人で何とかクエストを達成した訳だけど、こんな調子じゃ、先が思いやられるな……。


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