第3話 ソロ?冒険者


 烈火ブレイズを追放された俺たち──というか俺は、ギルドの受付に足を運び、パーティーを抜ける手続きを行った。


 既にソルから脱退の手回しをされていたのか、手続きはかなりスムーズにいった。



「はいこれ。新しいギルドカード。長い事ギルドマスターを務めているけど、進化したスキルが物騒だからって理由で追放されるのは、あんたが初めてよ」


【追放童貞喪失ですな。おめでとうございます、ご主人】


「お前はちょっと黙ってろ」



 何処か嬉しそうな声をあげるアイコをどつきながら、俺はギルドマスターであるクロニアさんに向き直る。

 

 彼女は、俺が異世界から転移してきた事を理解しており、この世界について、そしてこの国についてあれこれと教えてくれた恩人だ。


 何でも、過去に俺と同じような境遇の冒険者がいたらしく、その時の名残で面倒を見てくれたらしい。誰かはわからないがその人に感謝だ。



「さて、烈火ブレイズをクビになって、晴れてあんたはソロ冒険者になった訳だけど、これからどうするの? 別のパーティーに入るって言うなら、すぐにでも探せるけど」



 クロニアさんはそう言って、パーティーメンバーを探している冒険者が記載されてあるリスト表を取り出した。


 探してくれるのはありがたいけど……。



「いや、今はいいです。正直、烈火ブレイズのみんながコイツを不気味がるのもわかるんですよ。進化したばかりってのもありますけど、所有者である俺ですら、よくわかってないんですから」



 今日何度目かのため息をつきながら、アイコへと視線を落とした。


 進化したスキル、AI鑑定。何故かそれが擬人化し、実体として現れたアイコには、不思議な点も多い。


 とにかく今は、コイツの事をよく理解する必要がある。



 でないと、また別パーティーに入ったところで、気味悪がられて追放されるのがオチだ。


 クロニアさんは、そんな俺の意図を汲んでくれたのか、そっと目の前にソロ冒険者用のクエストを提示してくれた。



「ま、あんたならそう言うと思ったわよ。これ、ビッグトードの討伐クエスト。繁殖期で数が増えてるから少しでも減らして欲しいって、国から直々に依頼されたものよ。金払いも相当だけど……受けてみる?」


「受けます。ありがとうございます、クロニアさん」 



 俺はやや涙ぐみながら、ビッグトードの討伐クエストを受ける事にした。



【おや、どうして泣いているのですか、ご主人。泣かした相手は誰ですか。殲滅しますよ私】


「殺意と狂気に満ちたお前のせいだよ……」



 と、上目遣いで恐ろしい事を呟くアイコを連れて、討伐に向かった。



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