第53話 黒歴史ゲームは恐ろしい。

 本日、アカナ、光、虹が集まるくりばいたる。


バカゲーをしたいと思います。


 しかし、バカゲーをするだけなんかそのVtuberもやっています。


 何か、一ひねり必要です。


「よし、ゲーム作ろう!」


 光のその言葉に私たちは目を見開いた。


「そんなことしだしたら……。またシリーズ化しちゃうじゃないですか!嫌ですよ!せっかく『日常編』って都合の良い感じになってるのに、『ゲーム制作編』とかになったら面倒くさいって!」


 私は熱弁した。


「アカナ、めっちゃ熱いね」

「だって、私、主人公なのに、秋谷先輩のせいで全然出番なかったんですよ!もう少し主人公やらせてくださいよ!」

「いいじゃん。※あかりポジでやろうぜ」

 ※『ゆるゆり』の主人公


 虹は私に「目立たない主人公」の座を与えようとしていた。ほんとに要らない。


「で、バカゲーはやるの?」

「やるか、アカナの枠で」


 しかし、問題は何をやるかである、ネットで少し漁ってみようか。

 私がノートパソコンをいじりだすと、光がそれを急に閉じて言った。


「ネットで探す必要はないよ。その点はアテがあるんだよねぇ」

「アテ?」


 私が疑問に思っていると、彼女は和俊さんの席の近くにある戸棚を漁った。


「あった!」


 そんな彼女の手には一枚のディスクが持たれていた。


*****


「はい!というわけで今日はうちの事務所の社長が学生時代に作ったというゲームで遊びたいと思いまーす!」


 和俊さんの黒歴史ゲーム。『スーパースクールバトル』パソコンゲームのようだ。


 今日はどうやらこれをやるらしい。和俊さんにはしっかり確認をとっている。


 電話

光:ほんじゃ、やらせていただきますね。

和俊さん:え?あっちょっと!?


 多分、大丈夫だと思う。


 というわけで、光が話を繋げている間に私達二人はゲーム配信の準備をして、完了した。何故、配信始まってから準備しているのかというと、光がなりふり構わず配信ボタンを押したからである。


 電源をつけると画面にはデカデカと『スーパースクールバトル』と表示された。そして、


『スーパースクールバトルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!』


「「「うっさ!!!!!」」」


 若々しい男の声でそのタイトルコールが行われた。


「これ、しゃちょーの声?」

「いや、チームで作ったって言ってたから他の人かも」


 しかも、この声結構高め、耳に響く。


 それから一時間。基本操作は私が担当して、それぞれテキスト読み上げたり、リアクションに徹した。

 そして、我々配信者、視聴者がこのゲームに抱いた感想は……。


———クソゲーだな……。これ。


 声もうるさい。ストーリーも意味が分からない。キャラクターの台詞も「上から来るぞ!気をつけろ!」レベルで意味が分からない。


*****


「たから遊んで欲しくなかったのに……」


 後日、和俊さんがテンション低めで事務所を訪れて、そう言った。


 この『スーパースクールバトル』は和俊さんが趣味で入っていたゲームサークルにて初めて作ったものらしいのだ。今となっては特急呪物らしい。


「でも、しゃちょーのサークル、ときどき同人即売会でも見ますよね」

「コミケにはいくつか出したね。壁にも追いやられたよ」

「それ、普通にすごいじゃないですか」


 コミックマーケットでは人気のサークルは混雑を避けるため壁際にされるため、そこのベースでやっている者は、言わばすごいのである。


「できれば、これ遊んでよ、大学卒業前に作ったゲーム」


 和俊さんは私達に一本のゲームを渡した。

 今度、遊んでみるか……。

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