第51話 不法侵入やめてください!

  『くりばいたる日常編』と言いながら、何故かこの初回の舞台は小田中東高等学校である。

 しかし、腐ってもこの章は『くりばいたる編』だ。ならどうなるだろうか。


「やっほー!千穂!」

「きたよ」


 高校に光と虹が来るのだ。


*****


「何で来た?!」


 私は周りの目を見ずに叫んだ。


「だって、ねぇ……」

「千穂、学校にいるんだもん」

「そんなの、現役高校生なんやから、この時間は高校行ってるに決まってんだろ!てか、二人も大学生でしょ?!大学行きなよ!」

「なめんなよ……。この京都大学首席入学を……」


 光は目を閉じて、自信満々に言った。


「本当なんですか?これ?」


 私は聖川に訊ねた。


「いや、違う」

「違うんかい……」


 まぁ、そうだろうな。正直そう思った。


「今は普通に大阪大学行ってるよ」

「うんうん……。大阪大学……?」


 普通に難関国公立かよ?!


「ちなみに、学科は……」

「私は文系だから、文学部ダヨ」


 光は真顔で答えた。


 ちなみに、私たちの高校は行っても関関同立なので、到底行くことのできないレベルである。

 私はその場で跪いた。


「くっ………………。灯見先輩……」

「あれ?呼び方丁寧になってる」


 私が完全に学歴で負けて(まだ、大学受験は終わっていないので、完全には負けてはいない)泣いていると、廊下から美梨花が飛び出してきた。


「千穂!騙されては駄目!!まだ彼女は学生証を見せていないぞ!」


 その言葉に私は正気を取り戻した。


「そうだ……。そうだったな……。光!!」


 覚醒!上川千穂!!


「ちょっと……。こわいよぉ……。上川……」


 光は逃げの姿勢!そして、千穂は追いの姿勢!


 そして、二人の姿は教室から消えてしまった。


「いやぁ……。静かになったねぇ……」

「いや、ママも不法侵入なんで早く帰ってください」


*****


 その日の放課後、私と未鈴がくりばいたるに来ると、そこには正座をさせられている光&虹コンビがそこにいた。

 その状況を見るに、その正座を強制しているのは秋谷先輩のようであった。


「秋谷先輩……。これ、何の儀式何ですか?」

「反省の儀式」


 彼女は何やら、大量の原稿用紙を持っている。そして、付け加えると、今この正座している二人は1Hzも音を発していない。


 この二人がここまで静かなのは初めてだな。


「で、その原稿用紙は何なんですか?」

「読む?」


 彼女は大量の原稿用紙の一角を私たちに手渡した。

 そこには、こう書かれていた。


『反省文 灯見 光』


 そこには彼女の高校侵入についての懺悔が記されていた。

 「すみません」や「ごめんなさい」のような安っぽい謝罪などではない。約100,000文字による誠心誠意の彼女の懺悔がここに書かれていたのだ。


「100,000文字あったら、文庫本にできるな」

「この小説でも約70,000文字ですからね……。(第50話までの文字数で)」

「『灯見 光の懺悔』『聖川 虹の懺悔』で売り出せば売れるかな?」


 秋谷先輩がそう呟くと、その例の二人は……。


「「お願いだから、それだけはやめて!!」」


 と叫んだ。


*****


 電●文庫にて『灯見 光の懺悔』『聖川 虹の懺悔』

 各700円にて発売!!

 ※もちろんデマです。

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