第50話 そのライブの日から、私は記憶をなくした。
「みんな……。今日は……。ライブ、楽しみましょう!」
私たちはらしくもなく円陣を組んで一斉に頷いた。
「「「「「「おー!!!!」」」」」」
*****
私の名前は新美阿未来。普段は事務所に所属することはなく個人Vtuberとして活動している。そして、他にもネット漫画を描いたりしてひっそり活動している。
そんな私の趣味の一つはアイドルである。
アイドルをやるほうではない。アイドルを応援するほうだ。
まぁ、アイドルと言っても、私は男性アイドルにはあまり興味はない。私が
主に応援するのは女性アイドルだ。推せる。
そして、最近注目しているのは、『スーパーミラクルガールズ』というアイドルグループだ。安直な名前である。
何故、そんなアイドルグループを注目しているかというと、ただ一人、『ミカン』というメンバーを追いかけるためだ。
彼女はもともと地下アイドル界隈でかなりの人気を持っていた塩対応系アイドルである。
そのキャラに私を含む多くのオタクが魅了された。
しかし、そのアイドル事務所の運営が下手くそだったことから、すぐに解散してしまったのだ。
さすがに泣いたぜ。
そんな彼女が最近入ったグループというのが、『スーパーミラクルガールズ』ということか、彼女たちは一応、SNSもやっているようだ。あまり知名度が高くないようだが。
*****
私たちはようやくライブのステージの舞台に立つ。と言ってもまだ、小さなライブハウスのステージだ。
「観客きてるかなぁ……」
ナナが呟いた。ちなみに、今日は元気いっぱいなナナ②だ。彼女は今日のライブをしたがっていたみたいで外出許可証を提出していたみたいだ。申請されたみたいで、その日の朝は喜んでいたみたいだ。
しかし、そんな彼女でも今ではこんなことを呟くくらいに弱気だ。
「らしくないなぁ……。ナナ」
私はそんな彼女の肩にポンと手を置いた。
「ノドカ……?」
「笑顔でいかないとダメじゃん!」
私は普段滅多に見せない笑顔をナナに見せた。
「……ふふ、普段笑わないから、ノドカ、笑顔下手だね」
「……うるさいなぁ」
私はすぐ笑顔の表情筋の硬直を抜いた。
「あ、やめたの、残念」
「そんなこと言って、続ける気になると思った?あと、普通に疲れんのよ」
*****
そして、ライブ直前。円陣を組んだ後。
私は……。私は……。何をしていただろう。
記憶にない。私が緊張していたのか?
このあたりの記憶はない。この初ライブの日から、あの日まで……。
このアイドルであった期間を、私はあの日手放した。
鮮血に染まった。あの事実。私には思い出せない。
あの日、あの境の日の記憶がないから、私が何故記憶をなくしたのかも分からない。
そこから、私の次の記憶は『スーパーミラクルガールズ』が解散してから、それから、しばらく経った頃だった。
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