第37話 突っかかってくるオタク男子生徒s

「この配信見てる人たちのなかで高校生ってどんくらいいる?」

『はい!私、高校生です!』

『ぼく、小学生』

「あ、やっぱりいるんだ。てか、小学生なんかもいるんだね、ここに」

『教育に悪いね』

「いや、私は清純派でいきたかったんだよ!全部光のせい!」


*****


 とても、教室に居づらくなった。クラスメイトに私のファンがいたからだ。

 その人は西川拓郎というクラスの中でも中心的な人物。クラスの影にいる私が彼と関わることは少なかった。

 しかし、彼は私が木本仁アカナを推していると勘違いしていて、それから、彼は何か、私に仲間意識が芽生えたのか、ちょくちょく私に突っかかってくるようになってきた。

 正直、ちょっとウザい。対応するのも面倒だ。こういう風に人間関係を真剣にしていないから、学校内でも孤立してしまうのかもしれない。


『本当は誰にも関わらない学校生活に逃げたいたんじゃないの?』


 どこからか、そんな声が聞こえた気がした。

 私は思わず、その後ろを振り返る。


───なんだ?さっきの。


 気のせいか。という考えでひとまず結論を付けた。


『そういう言い訳をして、この状況に満足していないように見せているだけなんだな』

『自分で無理やり納得していないように見せているんだ』


 いや、これ、気のせいじゃないな。

 明らかに、情報として、この言葉が私の脳に入ってくる。この声は一体何なんだろうか。


*****


 それからも拓郎は私に突っかかって来た。何故か、隣に尾道を連れて。

 私はそれを適当に流していた。


 そして、ある放課後。

 私は漫研の部室に行くため、廊下にわたっていた。


「さて、どうやったら、上川を我々の仲間にすることができるのだろうか……」


 私の苗字が会話に出てきていて、私は咄嗟に身を隠してしまった。

 廊下の柱の陰から、こっそりとその声の主を見てみると、やはり、そこで話していたのは、例の二人だった。


「俺はただ……。彼女とアカナちゃん談議をしたいだけなのに!」


 拓郎はめっちゃ熱のこもった言い方で言い切った。


「そんなの僕がやってあげますよ。最近、木本仁アカナも拝見しておりますよ」

「いや、男と男って華がないじゃん」

「まぁ、確かに上川氏のルックスは普通に評価できるレベルですからね」

「声もいいよね、どことなくアカナちゃんに似ている気がする」


 本人ですからね。


 しかし、どうしようか。ひとまず、今はここを通ることはできない。どうやって、あのぼろい漫研の部室に向かおうか。

 ほかにどういうルートがあったっけ?まだ学校始まって一か月くらいしか経っていないから、まだマッピングが上手く脳に記憶できていない。いつも部室に行くためのルートは現在ふさがれているわけだし。


 私はその場で頭を悩ませた。そのため、上手く周りが見えておらず、私のところに真理が来ておることに気づいていなかった。


「おっ!千穂!どーした?」

「へ?」


 彼女は元気よく私に声をかけてきた。元気な先輩だ。

 そして、ふと我に返り、後ろを振り向く。

 そこには「あ、聞かれたか」と悟って青ざめているクラスメイトの男子生徒二名がいた。

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