ジェネリックバーチャルリアリティー偏(くりばいたる公式YouTubeチャンネル偏 続)

第28話 刺客が来ました!

 令和の時代ではとても珍しい、これが、『道場破り』というやつだろうか。

 とりあえず、私たちはそれぞれ楽器を構え、戦闘態勢をとっていた。


「なんだおら、てめえ、何中だ?」


 光が昭和のヤンキーみたいなことを言った。

 ちなみに彼女が持っているのはペットボトル。楽器は余っていなかったのだ。正直、あまりかっこよくない。なんか、はしゃいでる小学生みたい。


「え?中学?七森中だけど……。なんで?」

「いや、定番の台詞じゃん?ってさっき、七森中って言った?」


 ちょっといざこざしてきた。


「はい、ちょっと!とりあえず、状況を整理しようか!」


 何とか、この場を治めたのは和俊さんだった。


(あ、助かるっ!)


*****


 とりあえず、刺客を座らせ、お茶を与えて、落ち着かせた。


「あったかい……」

「和俊さん、このお茶、どこで買ったんですか?」

「ああ、静岡県で買った。確か、『遠州一』っていうお茶だったと思う」


 私は「へ~」と感心した。『遠州一』がどんなものかは勿論、知らないのだが。


「それでは、まず、君について、教えてくれるかな?」


 和俊さんはお茶を飲んで落ち着いている彼女に優しく問いかけた。


「えっと、はい……」


 彼女はその優しさの謎の不気味さに襲われ、少し、やりにくそうだ。手を所々遊ばせ、目はよく和俊さんの顔を見れていない。


「お~い、入ってきたときは、あんなに強気だったのに、いきなり、何ひよってんだよ」


 なんか、逆に光はすごい強気だ。足も組んで、堂々と座っている。


「あん?なんだよ?お前?喧嘩売ってんの?」


 それに彼女は対抗した。


「ねぇ……?光君?とりあえず、黙ってくれるかな?」

「ヒャイ……」


 今、和俊さんの表情は私の視界から確認することはできないが、光の顔はとても、とても、怯えていた。その顔は数秒前の彼女の顔とは違って、涙目である。ついでに、刺客も他、くりばいたるメンバーもしっかり怯えていた。

 おっかしいなぁ~!体が勝手に痙攣してる!これは『反射』です!


「あの……。いいですか」


 刺客はか細い声で言った。


「あ、ごめん、ごめん」

「あ、はい、私、実いうと、Vtuberです」

「「「「「だろうな」」」」」


 くりばいたるのVtuberたちの声は見事にハモった。


「なんで、分かったの?」

「いや~、こんな登場の仕方でこいつVtuberじゃなかったらなんやねんってなるじゃん」

「それは理解できないわね……」


 刺客は目を細めた。


「とりあえず、いつまでも『刺客』っていわれるの、なんか気に入らないから、さっさと名前言っていいですか?」

「ああ、うん、はい、いいよ?」


 別にそんなのに許可などいらないのに……。


「私、ジェネリックバーチャルリアリティー所属!李雀りすずめつばさよ!!」

「り……。李雀つばさ?!」←くりばいたる一同

「ねぇ!ジェネリックバーチャルリアリティーって、大手じゃん!」


 ジェネリックバーチャルリアリティー

 数多くのVtuberをかかえる、このくりばいたるよりはるかに大きなVtuber事務所だ。それゆえにオーディションの倍率も激しい。1000倍はあった気がする。入るのは大変だが、その分、事務所の知名度も高いので、入ってしまえば、かなりの人気を獲得することができる。

 だから、このくりばいたるにいる者たちは勿論、この李雀つばさそ存在を知っていたのだ。


「で、そんな方が、このちっぽけなV事務所に何の御用で?」

「そんなの決まってるでしょう……。勝負よ!」


 つばさの背後に『ババーン!』という文字が出現し、背景が爆発した。(というインパクトの暗示)

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