第23話 未鈴様に気づいて!

「あ、アカナ、次のShorts、何にする?」


 私がまたくりばいたるに来た時、聖川先輩は私に向けてそう言った。そして、初めて彼女が私に視線をやった時、聖川先輩と秋谷先輩は眼を見開いた。


「「未鈴来とるやん!!」」


 未鈴に指差して、二人はそう言った。


*****


「いや~。学校で陰気なアカナが即未鈴を連れ出してくるとは……」


 秋谷先輩は腕を組んで、私を関心した。


「負けた~!まさか、アカナに負けるとは!」

「私、聖川先輩と勝負してましたっけ?」

「いや、こっちが勝手にしてた」


 ちなみに、その勝負内容はアカナが未鈴をここに連れ戻すのが先か、聖川先輩が光をここに連れ戻すのが先かを競うものだったらしい。


「そんな勝手な……」


 つまりは、まだ光はここに来れていないらしい。努力はしているみたいなのだが、やはり、説得に苦労しているようだ。


「とりあえず……。どうする?」

「まぁ……。Shortsとろっか……」


*****


 とりあえず、計画していた、私と聖川先輩と秋谷先輩、三人のShortsを撮り終えた。


「おわたー」

「編集はこっちでしておくね、多分、今夜には上げられると思う」

「ありがとうございます。聖川先輩!」

「いやいや、なんのなんの……」


 そんな私たちの会話に混ざれていない方が一人……。


「あの………………。私のこと、忘れてません??」

「あ、そういえばいたのか」


………………。


「帰ります!」

「まっでぇーーー!!ママからのおでがいだよー!(おねかいだよー)」


 聖川ママは哀れに娘の脚にしがみついていた。まぁ、覚悟決めてここまで来て、この対応となったら、こうなっても、しょうがないような気がする。


「お願いだよ!新衣装描くからさー!」


 聖川先輩がそう言い放った瞬間、未鈴の動きがピタッと止まった。


「本当なんですか?」

「もちろん!!」


 意外に興味ありげだ。


「彗星未鈴、今でも、十分可愛い衣装着てんのに、ほしいの?」

「いや、あれ、可愛いけど、服の面積が……」


 ん?十分あるじゃないか。


 ちなみにどんな服かというと、谷間がガン見えであり、ムチムチな肉体がしっかり見える、とても健全なデザインである。


「ちょっと、エッチなんですよ!Xからのファンから、『未鈴ちゃん……。意外とエッチだったんだね♪』って言われる始末だし!エッチなのは、私じゃない!わたしじゃないのよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


 カオスだ。非常にカオスだ。

 未鈴は悶え、頭を抱え、そしてその場で跪いて、また、言葉になっていない声を発した。



「まるで、化け物だな……」


 秋谷先輩がそう比喩した。


「化け物?違う……。俺は悪魔だ……」


 彼女は悪魔らしいです。


「とりあえず、落ち着け、我が娘よ!分かった!ここで今すぐ描いてあげるから!」

「いや……。今すぐ、描かないでください」

「「「は?」」」

「一週間、一週間まるまる使って描いてください。その出来で、戻るか、どうか検討しようと思います……」


 未鈴はここから立ち去ろうとした。


「待ってよ!」


 私は自然に彼女を呼び止めた。


「何?」

「え………………っと、まず、なんでいきなり、そんなことを?」


 数十秒、沈黙が続いた。


「………………。気が変わって……。あ、あと、私をほったからしにしたから」


 そこか~!

 私は思わず、手を額に当てた。


「それじゃ、一週間後、また来ます」


 そして、扉が閉まった。


………………………………。


「「「めんどくせー………………」」」

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