第22話 冷たい昼休み

 騒がしい高校の昼休み。私はこの時の教室が嫌いだ。

 皆が友人と集まって、昼食を食べている中、ぼっちでいることは、より、自分の孤独さを際立たせている感じがするからだ。

 だから、私はこの時間にはよくこの漫画研究部の部室にいる。カギは入り口前の絨毯の下に隠されているから、わざわざ職員室にまでいかなくてもよい。ちなみにこのカギを絨毯に隠すということは顧問が発案したらしい。それでいいのか?


 今朝、コンビニにて購入した弁当を持って、自らの席に座る。そして、手を合わせた。


「いただきます……」


 割り箸を割り、好きな唐揚げ弁当に手をつけようとしたその時、部室の扉から「コンコン」という音が響いた。

 先輩かな?とも思ったが、先輩がノックして部室の入るわけない。うちの部活の先輩たちは兄弟がオ●ニーしていても問答無用で部屋に入ってくるような人たちである。そんな菩薩な人たちだ。

 そんなことを考える前に、扉は開き、ノックをした者が判明した。


「失礼します……。アカナ……。じゃなかった、千穂、ちょっといい?」


 まさかの美梨花だった。


「ど……。どうしたの?」


 私は苦笑いで言った。


「一緒にご飯食べない?」


*****


 何故か、私は学校カースト上位の美梨花と漫研の部室で弁当を食べている。その雰囲気は明らかに楽しいものではない。先日、あんなことがあって楽しくおしゃべりできるはずがないのだ。


「美梨花……。友達とご飯食べなくて大丈夫だったの?」

「ああ、もう話付けているから、心配しなくて大丈夫」

「あ、はい……。わかりましたぁ……」

「………………」


 ダメだ!会話が続かない!この沈黙は人間なら恐らくわかるだろうが、滅茶苦茶気まずい……。

 箸と紙皿が当たる音だけが室内に響く、廊下では騒がしい声が響くのにここは完全にお通夜状態だ。

 そんな状態を壊したのは、相手側、美梨花だった。


「千穂……。いや、アカナ……。ちょっと相談があるんだ」

「はぁ……??」


 彼女が私を「アカナ」と呼ぶのであれば、その相談というのはおそらく、Vtuber関係のことだろう。その私の予想は的中したようだ。


「私……。灯見先輩になんて言ったらいいんだろう……」


 だろうな。


「まず、なんで光ってあんなんなったの?」

「そういえば、なんでアカナは灯見先輩のこと「光」って呼び捨てにしてるの?」


 そこに付け込んでくるか。


「う~ん……。雰囲気?」

「あ、そうなんだ」


 未鈴はうんうんと頷いて反応した。


「そういや、光がさ、出ていったとき、未鈴、なんか言ったの?」

「あ~え~っとね……。そんなことより、あの後、くりばいたるってどうなったの?」


 ごまかしたな。


「とても気まずい感じになってるよ。おかげ様で」



 私のその言葉を聞いて、彼女は明らかに申し訳なさそうな顔をしていた。

 わかりやし~な、こいつ……。


「あ……。どうすりゃ……。いいんだろう……」


 未鈴のその言葉に私はため息をついた。


「そんなの決まってるじゃん」


 私はその場で立ち上がった。


「何があったのか知らんけど……。とりあえず、光の心情を変えればいいんだよ。登場人物の心情変化は小説この作品で絶対に起こる出来事だよ!巻き起こしてみようよ!」

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