第13話 のどかの出番づくり

「ああ!よかった!」


 秋谷先輩がいきなり安堵した。


「何が、よかったんですか?」

「いや、ここで『翌日……』とか入ったら、また私の出番なくなるって思ったから」

「まぁそうだな。のどか、マジで来ないしな」

「とりあえず、メタ発言は作品の雰囲気を壊すので、そろそろやめてください!」


*****


「へー。未鈴のデザイン、決まったんだ」


 秋谷先輩が灯見先輩のノーパソを見ながら言った。


「かわいいし、かっこいいね。誰が描いたの?」

「虹だよ。虹」

「へー。絵、うまいとは思っていたけど、まさか、ここまでとは思わなかったなぁ。てか、虹、Vtuberのデザインできるんだ」


 おそらく、この台詞の裏側には、いつか、和俊さんが言っていた。ホロ●イブのVtuberのデザインを断ったことがあるだろう。

 和俊さんはママが「やりたくなかった」と。

 秋谷先輩はママが「できなかった」と認識したようだ。

 もちろん正しいのは、前者である。


*****


「久しぶりに、ここ来たし、ドラム叩こうかな?」


 秋谷先輩は前に和俊さんが持ってきた、ドラムのもとへと向かった。


「だれか、セッションしよーよ」

「私、できない、未鈴、できないの?」

「確か、アカナはギターができたはずです」

「私は未鈴のことを訊いているんだが……」


 灯見先輩はなんか不機嫌そうだ。私は仕方なく、ベースに手を伸ばした。


「あれ、未鈴、ベース弾くの?」

「ギターよりは簡単そうなんで」

「確かに、それは同感だけど。私のバンドもギタリストのほうがベースうまかったし」

「それ、ベーシストは浮かばれないですね」


 とりあえず、ベースを弾くことにした。


ボンボンボンボンボンボンボンボン


「うまいねーでも……」

「ベースとドラムだけじゃ、味気ないですね……」


*****


 未鈴ものどかも帰って、くりばいたるには光だけ残った。彼女はそこで、電話していた。


「虹、大丈夫か?」

「うん、まぁ、どう?未鈴、心配してた?」

「多分、休日全部潰れたから、半ギレしてると思う」

「高校生、こえ~」

「つぎ、いつこれそう?」

「ん~??目処がつかないな……。まぁ、あんまり期待せんでくれ」

「まぁ……。了解」


*****


 そして、翌日。私は放課にまたまたくりばいたるに来たら、ママが来ていた。


「よっ!ごめんね~!まじで」

「ほんとですよ……」


 ママに文句がありすぎて、恒例の「おつかれさまです」を言うのさえままならなかった。


「で、どうだった?Vtuber彗星未鈴のデザインは?」

「まぁ、はい!それは最高でした!ってか、デザインするの、めっちゃ早かったですね!」


 私がそう彼女を褒めると、彼女はいとも簡単にデレテしまった。


「ほんじゃ、今日中にさっさと作業して、早いうちに、試しに配信するか」

「え?もうですか??」

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