第10話 彗星未鈴の誇り高きママ!!

 くりばいたるに久しぶりに行ったその翌日の学校。珍しく、アカナ……。いや、上川千穂が私に話しかけてきた。


「お……。おはよう。水野さん」

「あ、おはよう」


 まだ、お互いよそよそしい。灯見さんのように明るく、軽く、交流できればいいのだが、そううまくはいかない。

 まず、彼女からも全然話しかけてこないし、一緒に遊ぼうとして、話しかけようとしても、なんかいないし、話す機会がまずないのである。


「あ、美梨花ぁー!こっち、こっち!」

「あ、うん!千穂!一緒に来て話さな……。あれぇ?!!」


 私が友達の呼び出しに応えている間に千穂はどこかへ行ってしまった。


「どうしたの?美梨花」

「い、いや、なんでもっ!!」


──────どこ行ったんだろう……。私の友達と仲良くしてほしいのに。


 最近、どうやら彼女は居場所を見つけたらしい。それが、漫画研究部。そのため、彼女の姿が教室にない場合はたいてい、漫研の部室にいることが分かった。私もできるだけ彼女と仲良くなるが為、この高校は兼部制度もあるし、入ろうかなとも思ったが、何やら、彼女の仕草から見て、私から逃げるために部活に来ているように思えたので、やめておいた。もちろん、少し、心は痛いが。


 下校時、ある人から、電話が来た。


『もしもし、繋がってる?』


 声でわかる。電話の相手は聖川虹だ。


「はい。聞こえてますよ」

『よかった。で、さっそく、本題なんだけど、さっき、しゃちょーに聞いたんだけど、ちょっと詳しく話したいから、今からくりばいたる来れる?』

「あ、はい。ちょっと待ってください」


 私はそう言いながら、今日の予定を確かめる。この先の予定は……。ない。


「はい!行けます!!」

『おっけ、じゃあ、できるだけ早急に』

「あ、はい」


 ぴっ


──────なんか、ちょっと怖いな。


*****


「っで、貴方のママに私がなればいいんですか?」

「は、はい。絵柄がどストライクで……」


 聖川先輩は結構、私に厳しい詰問をしてきていた。目も合わせられない。怖い。手に手汗がにじむ。私は緊張しているのか……。


「ん~……。しゃちょー。描いていい?」

「え?!俺に決定権、譲るの?!」


 和俊さんは驚いたような、あきれたような。微妙な表情を見せた。


「俺は別にどっちでもいいんだけど……」


 和俊さんは指を頬で搔きながら言った。


「あ……。そう。んじゃ、私、描くよ」

「え?!」


 先に驚いたのは、何故か私ではなく、和俊さんだった。


「どうした、しゃちょー?!」

「だって、ちょっと前にホロ●イブのVtuberのママになることは拒んだのに……」

「それは、それ、これはこれ。私、彗星未鈴のビジュをかきたくなったの」


 彼女は胸をはって言った。そうか、彼女は自由人なんだ。


「では、聖川先輩……。じゃなくて、虹ママ!よろしくお願いします!!」

「やめて~。その言い方、伊地●虹夏みたいだから……」


 ママは照れ臭そうに言った。

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