第9話 話は脱線するものです。

私、彗星未鈴は聖川虹の絵柄に惚れた。


「和俊さん!私……。聖川虹先輩に描いてもらいたいです!!」

「聖川虹ってうちの?」

「はい!」


 事務所内のやり取りになるだろうから、楽な話になるだろう。と思っていたが、次に和俊さんが放った言葉は……。


「う~ん、できるかな?」

「ん?」


 さすがに、その言葉を疑った。


「はい?」

「いや、だから、できるかな?って」

「い、いや、チャ●ンジ一年生じゃないんですから」

「あ、そういえば、チャ●ンジのあのお便りのやつ、なんか投函されてたよ」

「誰宛なんですか?!それ!届いても、進●ゼミでしょ!ってかVtuber事務所にそれが届くのがおかしいんですけど!」

「で、どんな話してたっけ?」

「さあ??」


 ほんとに何話してたっけ??


*****


 なんとなく、宿題をしていた。なんで、事務所で宿題しているの?私が聞きたい。


「「お疲れでーす」」


 事務所に二名のVtuberが入ってきた。アカナと秋谷先輩だ。

 ……。

 あっそか、聖川先輩のことについて話してたんだった。そういえば、今日、聖川先輩、来ないのかな?ちょっと、よくコラボしてる灯見先輩に聞いてみることにした。


「灯見先輩、今日、聖川先輩来ないんですか?」

「うーん。聞いてないなぁ、ま、いつもなんだけどね。で、なんで?」

「いや、ちょっと話があって」

「あー、なるほどね」


 灯見先輩は何かを察したようだ。


「まぁ……。がんばれぇ、あと私にはもう素で話しちゃって大丈夫やで、なんか、アカナもいつの間にか、私のこと呼び捨てにしてるし、なんか、もう、私、そうゆうキャラっぽいし」

「あ……。はい」


──────────そうゆうキャラってなんだ?


*****


「そういえば、未鈴ってVtuber準備中ってSNSで言ってないよね?」


 秋谷先輩が私に尋ねた。その隣ではアカナが黙々とノーパソで作業をしている。


「あ、はい、だめですか??」

「いや、言ってないのなんでかな??って思って、あと準備進んでっかな?って」

「あ、なるほど」


 私は納得した。ふと、アカナに目を向けると何やら、こくこくと頷いている。

 和俊さんに目を向けるとこちらも何やら頷いている。結構、ハイペースで。そして、彼の耳にはイヤホンがつけられていた。なに聞いているんだろう。

 私はとりあえず、秋谷先輩とアカナに合図を送り、二人はそれに乗った。

 そっと、和俊さんのスマホを確認する。すると、ウ●娘のあの有名な電波ソングを聴いていた。


「「「…………」」」


──────そっと、しておこう。

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