彗星未鈴編①

第8話 彗星未鈴のくりばいたる入所、そして、好みの絵柄。

 私がネットをはじめたのは、中学二年生の春だった。

 Twitterでアカウントを作り、自分の何気ない日常をツイートした。そして、一ヶ月が経つと、フォロワーが50,000人になっていた。


「何だ、ネットって結構、簡単なのか」


 そう思っていた。

 まぁ、実際、私とってはヌルゲーであり、気づけば、フォロワーが100万人を超えていた。


 沢山のフォロワーからのリプを見るのは最高の至福であり、そのときもその至福を味わっていた。

 そんな時、ある一つのリプを見つけた。


『未鈴さんがVtuberになったら、どうなるんだろう?きっと、めっちゃ推せる存在になるんだろうなぁ』


 ほう…………。


 Vtuber。非常に興味深い分野だ。でも、全く手を付けていない。未知の分野でもある。つまり、やったことも、見たこともないのだ。

 私のフォロワーは結構、Vtuberを見ている人が多い。あまつさえ、Vtuberが私をフォローしているくらいだ。

 だから、その存在は知っていたし、少し見てみようかな、やってみようかなと思ったことも以前に数回かあった。しかし、イマイチやる気にはならなかった。

 しかし、我がフォロワーがそういうなら……。やってみてもいいかも。


*****


 というわけで、応募したら、オーディション受かりました!!事務所名は「くりばいたる」聞いたことない無名事務所だ。公式YouTubeチャンネルすらないらしい。私から言わせれば、伸ばす気があるのかと思う。

 しかし、無名事務所だからこそ、私が受かることができたのかもしれない。


 そして、中学を卒業し、高校にも無事合格。そして、先日、事務所建物に実際に入って、とりあえず、自己紹介。無事、事務所の先輩たちと交流を持つことができた。


 そして、それからしばらく経った頃……。

 私は、その日、数日ぶりに事務所に顔を出した。


「お疲れ様です」

「おつかれー。ひさしぶりやな」

「お疲れ様」


 今、事務所内にいるのは、灯見先輩と和俊さんだけ。というか、灯見先輩はいつもいるな……。

 というわけで、私は和俊さんに尋ねた。


「和俊さん。私のデビューっていつくらいになるんですか?」

「未鈴くんのVtuberデビュー?まだ準備とかあるからな~」

「そうですか……」

「そういや、描いてほしい人とかいる?」

「描いてほしい人ですか……?」

「うん。この人の絵柄が好きとかで希望したいイラストレーターとかいたらできるだけ尊重したいとは思ってるんだけど」

「あ……。はい。考えておきます」


 考えてなかった。


 まず、私は流れで来たような人間なので、そんなイラストレーターとか、そんな分野知ったこっちゃない。描いてくれた人を「ママ」と呼ぶ風潮もつい最近知ったのだ。

 私は事務所のソファに座った、この席は現在、ペンタブを使って、絵を描いている光先輩と対面となっている。それを見ていると、私は少し、先輩が描いているイラストに興味を持った。


——————どんな絵描いてるんだろう。


 そういえば、彼女のYouTubeチャンネル、私、見たことなかったな。とふと思った。検索してみようと、スマホでYouTubeを立ち上げ、「灯見光」調べる。

 すぐに引っかかった。


灯見光Channel 14000人


 配信のアーカイブより動画のほうが圧倒的に数が多いチャンネルになっている。

 私は、その動画のうちの一つ、私の事務所の同僚にして同じ高校の同級生。木本仁アカナが初めてこのチャンネルに顔を出した動画を拝見した。動画名は『木本仁アカナの下ネタ連呼は誰もが興奮する♡』


 見た瞬間、私は聖川虹のデザインに惚れた。


「灯見先輩!この聖川先輩のママって誰ですか?!」

「えっと……。確か、虹は自分で描いてると思うけど……。いきなりどうした??」

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