第6話 入部します!

「高校一年生の同志!!いかが高校生活を過ごしだ?!」

『ここに高校生なんか存在するのか?』

「あれ?同志いない?リスナー、おっさんしか居ない?」

『僕、高校生ですっ!』

「あっ本当?!」

『おっさんやぞ』

「嘘だろ?嘘だよな?」


*****


 Vtuberの活動をやりながらも、しっかり高校には通うハイブリッド高校生Vtuberである私は馴染めないながらも(勿論、高校に)何とか頑張っていた。いや、少しは馴染んでいるような気がするか。


「おはよう。千穂」

「ああ、おはよう……」


美梨花がいることだろうか。やっぱり、友達がいるのといないのとじゃ全然違う。中学生の頃は本当に……。いや、これ以上このことを考えると本当に辛くなるのでやめよう。

というわけだが、美梨花はなかなか顔が広い。SNSでもリアルでも最強ってチートかよ。そんな感じで彼女の時間は全て私に費やされるわけではない。そのため私はどうしても現時点の高校では孤立してしまうのだ。ここで、私は考えた。


「部活を始めれば少しは変わるか?」


 現在、一年生は部活動仮入部期間だから都合が良い。なんか、入ってみたら、嫌でも誰かと関わることにはなるだろう。入ってみるのも手かもしれない。


*****


部活動紹介をろくに聞いてはなかったが、この高校、意外と部活動が多い。兼部制度があるから部活動が盛んのようだ。勿論、運動部も多いが、文化部もしっかりある。私の選択として、運動部は無条件で除外されるから、私は文化部の欄から選ぶことになる。

とりあえず、やってみるか。


*****


これからは、部活動ごとに千穂の一言とそれに対した先輩の一言によって仮入部が展開される!テンポが恐ろしく速いから、遅れるなよ!!(小説で遅れるわけがない)


茶道部

「アッツ!!持てない!」

「上川さん……。熱いの弱いのね」


書道部

「うう……手が震える……」

「手汗も凄い出てるぞ……」


 料理研究部

「ギャー!!燃えてる!燃えてる!」

「焦げてる!焦げてるって!上川さん!!」


 写真部

「やばい、写真の編集と動画の編集ってやっぱり違う……」

「パソコンは使えるんやね」


 工作部

「なんで、異世界ゲートなんか作ってんですか?」

「使命?」


 化学部

「私、超文系でした」

「何で来たの?」


 軽音部

「ギターなら弾けます」

「めっちゃうまいやん。歓迎するで」


 吹奏楽部

「ふ……吹けない」

「練習すれば多分できるとは……思う」


 ロボット研究部

「わぁ、ガンダムみたい」

「夏のコミケに出そうと思ってるんだ」


*****


 連日、ずーっと仮入部に参加してたら、さすがに体がズタボロだ。

 とりあえず、今日はお休みにして、久しぶりにくりばいたるに行くことにした。


「お疲れ様でーす」

「おつかれー」


 私が事務所に入ると、普通に光が返事をした。


「光……。いっつもいるよね?」

「悪い?」

「いや、悪かないんだけど、何?ここ住んでんの?」

「いや、ちゃんと家はあるけど、ほぼほぼここで過ごしてるかも、ここ、落ち着くのよ」


 確かにそれは少し分かる。最初の方は雀卓とか碁盤とか何かあって、あまり落ち着かなかったが、慣れてみると、普通に他のVtuberとも遊べるし、作業も集中できるから私も何気に気に入っている。これも和俊さんの計らいだろうか。


「で、どうしたの?最近来てなかったけど」

「あ、ちょっと部活の仮入部に連日で行ってて」

「ぶかつぅ?そんなことやってる暇があったら、配信しろよー。下ネタ言えよー」

「それだよ。貴方のお陰で私、淫乱女のレッテル貼られてるのどうにかしてよ」

「ダメだ。諦めな」


 光は冷たく断った。


*****


「ちなみに、光だったら、どの部活入るの?」

「どんな部活があんの?」


 光はポテチを貪りながら、私に訊ねた。


「丁度、いいところに部活動一覧表が」


 私は、鞄から取り出したそれを光に手渡した。光はそれを受け取るや否や、まじまじと見て……。


「漫研だな」


 と受け取ってから五秒で答えた。


「その理由は?」

「絵(可愛い女の子)を描きたいから」

「知ってた」


 このくだりは終わったのち、聖川先輩が来たため、折角なので動画を撮ることになった。


「今日は何する?」

「普通にトーク?」

「えー何か企画しようよ!」


 もう完全に友達の話し方である。聖川先輩とはまだ距離があるが、いつか、これも埋めてみたいな。


*****


 とりあえず、音声の録音ができたので、あとは映像。すなわち、絵と動画編集をするだけである……。

——————まあ、それが一番時間を食うのであるが。


 光、聖川先輩が絵を描いている間に私は先程録ったやつのできるところまでを編集していた。時間は有効活用しなくてはならない。

 そうしていると、秋谷のどか先輩が事務所に入ってきた。


「あ、人気Vtuber」


 光が何やら皮肉った言い方で言った。


「ふん、その通りよ。私は人気Vtuberなんだから!!」

「乗ってますね、秋谷先輩」

「いや、光が言ったから、乗っただけ」


 秋谷先輩は胸を張って、そう言った。


「ん?何これ?」


 秋谷先輩がそう言いながら、持ったのは、先程の話の話題であった部活動一覧表だった。


「ええやん。何?アカナ、部活入るん?」

「あ、はい」

「ええな~……。私やったらなんやろ」


 秋谷先輩はまじまじと私の所持物である紙を見た。


「因みに、虹が選ぶんやったら何にするん?」


 光が聖川先輩に訊ねた。


「私?え、のどか。ちょっと、それ私にも見せて」


 聖川先輩は秋谷先輩の背後にまわり、部活動一覧表の紙を覗き見た。

 のち、二人は「ほー」やら「う~ん」やらならいいながら悩んでいた。


 その間、私は光と話していた。


「そういえば、くりばいたるのVtuberって何歳なの?」

「ええ……。それ、言わんとあかんの?」


 光は露骨に嫌そうな顔をした。なんか、そんな顔をされると、これ以上この話題の会話をしたくなくなるではないか。いや、でも聞くんですけどね。


「ええと……。まぁ、いいか、一応大学生で酒飲めまーす」

「まじかよ、その幼女体系で大学生なのかよ」

「うるせぇ」

「ちな、処女膜はどうなってんの?」

「いや、健在してますけど、やっぱ、お前も淫乱女じゃねーか」

「もう、開き直ってるよ」


 そうやって、光と雑談してると、二人が「これだな」とハモった。


 まず、聖川先輩。

「私はやっぱ、漫研かな。絵、描きたいし」

「なんだ、光と同じか」

「仲いいな~。お前ら」


 次に秋谷先輩。

「秋谷先輩はなにがいいと思いますか?」

「そうだね~。私は高校は軽音部に入ってたんだけどね~。中学は吹奏楽部」

「なんで、高校は軽音はいったの?」


 光は意外に興味深々だ。


「それは、『け●おん!』を観て、影響されたの」

「へー。って、え?!秋谷先輩、今、年、いくつなんですか?!」

「二十代とだけ言っておこう」


 秋谷先輩は何やら、いたずらっぽく笑った。


「っで、話、戻るけど、秋谷先輩は楽器なんだったん?」


 聖川先輩も興味深々のようだ。


「それがね……。ドラムなんだよ」

「え?!それにしては、腕細いね」

「何年叩いてないと思ってんだよ」


 っというわけで叩いてもらうことになりました。


「ドラムもってきたよー!」


 和俊さんが重そうなドラムセットを持ってきた。


「和俊さん……。他の仕事が大丈夫なんですか?」

「一区切りして、暇だったから来たんだよ。ついでに、ギターとベースももってきたよ」

「バンドが完成した……」


*****


ドドドドドドドドドドドドドドドド!!ドンドン!!チッチッチ!!!


 結構うまい。異常なドラムの電波ソングでも普通に叩けてしまっている。


「すごーい。のどか、普通にかっこいい」

「うん、秋谷先輩、かっこいいけど、話、脱線しすぎじゃない?」

「あれ、何の話してたっけ?」


 汗だくの秋谷先輩がとぼけた。


*****


 翌日……。私は漫画研究部に入部届を出した。

 そして、今日、放課後。いよいよ部室に行くことになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る