第3話 エロくなります!
「私は純粋キャラですか?」
『いきなりどうした?』
「私はえっちくないですか?」
『いえ、えっちいと思います』
『この配信でエロ要素が出てくるとは』
「私はエロに汚染されていませんか?」
*****
今日は何か気かがりになって、くりばいたるのオフィスに向かった。
「お疲れ様でーす」
私がそう言いながらオフィスのドアを開けると……。
「クジュまん♡グチュまん♡」
「ヤッベェぜ!勃起したち●こみてぇだ!」
変なこと言ってる先輩が居ました。
「聖川先輩、灯見先輩。何やってるんですか?」
「動画撮影だよ」
「ねー虹―!もうちょい過激に言ったほうが良くない?」
灯見先輩は私に反応してはくれなかった。
「……で。聖川先輩、撮影というとどんな?」
「んー。なんて言うかな。コントみたいな感じ?」
「へー。なるほど……」
この二人のチャンネルとのどか先輩の活動を見るからに、どうやらこのくりばいたるのVtuberは結構動画に力を入れているみたいだ。これは和俊さんがそう図ったのではなく、なんかこんな感じになっていたとのことだ。
そして、この二人、灯見光と聖川虹はよく二人でコラボをして、こんな風に『女の子が下ネタを言うコンテンツ』を提供している。
「そーだ。三人の方が表現の幅も広がるから入ってよ」
「いや、遠慮しときます」
*****
よく見てみると彼女たちは例の黒タイツの服を着てはいなかった。自らでそのシュチュエーションに合ったイラストを描いてアニメーションにしている。職人技だ。
「絵上手いですね」
私たちは率直に彼女たちに言った。
「いやー、元々は下手だったんだけど、あの黒タイツしょっちゅう着るの嫌やからどうしようってなったらこうなった」
面倒の上に才能が生まれたようだ。
とりあえず、私もパソコンを広げて、今夜の配信の準暇をすることにした。今日はゲーム実況かな?
「ん?あれ、そういや、あんたの名前って何だっけ?」
灯見先輩が私に話しかけてきた。思い出す限りではこれが彼女との初めての会話ではなかっただろうか?
「あ、えっと……。それってリアルの方ですか?Vtuberの方ですか?」
「事務所内だからVtuberの方で」
「はい。
読者の皆さんにも初めて紹介するだろう。三話にして。私の名前は木本仁アカナ。まだ、成長途中(3年目にして)のVtuberである。
「木本仁かぁ。清純派で売ってるね。にしし……」
「にしし?」
灯見先輩が不気味な笑みを私に見せた。
「木本仁のえちえち画を描くのだったらこんな感じかな?」
灯見先輩はペンを滑らせた。そして、約三分後、私に見せてきたのは、木本仁アカナの全裸イラストだった。
「ちょっとー!それ、利用規約違反ですよ!」
「投稿してないからいいでしょ。てか、木本仁のエロイラストならpixivに普通転がってるけど」
「はいはい、知ってますよ。そのことに関しては」
「何?S●Xの画像見てオ●ニーしてんの?」
「してるわけないでしょ!」
「エロくなろうよー」
「エロくなりません!」
「ちょっと、それじゃ、タイトル崩壊だよ……」
メタ発言はやめてほしいところだ。
そう思った瞬間、私の立てかけておいてた鞄が倒れ、私の所持品が露わとなった。
「倒れたけど……」
聖川先輩のその言葉でようやく私は今の自らの荷物の状況を知った。
その露わとなった私の所持品の中には、とても清純とは言えないような本が入っていた。その本のタイトルは『秋谷のどかと●●●えちえち生活』。
「こ、これは…………」
瞬間、灯見先輩がスマホを持ってカチャカチャ写真を撮り始めた!
「ちょっと、何やってんですか?」
「いや、秋谷に見せよっかなって。嫌なら一緒に動画撮って」
正直、それは勘弁してほしい。
「わ……わかりました」
*****
「虹ちゃんと光ちゃんとそれに加えて、アカナちゃんのいやらしお絵かき教室〜!」
「いえ〜い」
さて、私の顔は今どんな感じになっているだろうか……。未来の私は今の私を見てどんな感情を抱くだろうか。涙を流しますか?目から?下の●●●から?いや開き直ってイくなんてことはないだろう。思想が完全にこの二人に飲み込まれている。
私は思わずその場で頭を抱える。正直泣きたいよ。
「ちょっと、アカナ、真面目に撮影してよ」
「この撮影のどこが真面目なんだよ」
うっかり灯見先輩に厳しく突っ込んでしまった。
「この撮影は、必死にエロくなることが必要なんだよ!エロくなれよ!!」
「はい!エロくなります!」
厳しい!この人スパルタだ!!
ん?待て、さっきの言葉遣いはいいのか?
そして、その撮影の間、私は自我を捨てた。
*****
撮影終了後。
「てか、アカナ、なんで秋谷のどかのエロ同人誌なんかもってたん?」
「あーそれ気になるー。聞かせて、聞かせてー」
なぜか彼女たちはあの同人誌に興味津々である。あんまり話したくはないのだが……。
そんな感じにしていると未鈴が事務所に来た。
「お疲れ様です」
「よーし、未鈴に言おっかなー」
「図ったな!光!」
あまりに先輩に向けては無礼な言動だが、今は気にしてられるか。折角、先日の学校にて友達になれたと思ったのに、このままでは……。
『え、何?キモッ』
ってなってしまう……。それだけは阻止しなくては!
私は光の口をふさいだ。
「もごもごもごもごもごもごもごもごもご!!!!!!」
彼女はジタバタ私の腕をどかそうと試みている。
「あれ、なんですか?この机の上にある本は」
「「「あ……」」」
死んだ。
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