第2話 高校生になります!

「みんなー!来てくれてありがとう!実は私今日から高校生になひましたー!この活動始めたのが中一からだから……。時が経つのは早いものだ……」


『高校って通信制?』


「ううん。全日制だよー。県内の」


『何県?』


「それ、教えちゃー駄目でしょw」


『高校生になっても推せる!』

『受験よく受かりましたね!活動しながら』


「あーありがとー。そうだねー。まぁ結構配信待たせちゃったけど……。なんとか受かったよー!それでね、今日は高校の入学式だったのよ。友達?うん、まぁそこそこできたけど……。いや、それでね?なんか、凄い人がいたのよ!」


*****


 本日は入学式だ。

 私……。今日から念願の高校生になります……!

 思えば、Vtuber活動と受験勉強の両立は骨が折れた。元々の地頭がほどほど良かったお陰で何とか高校合格を勝ち取ったが、それがなければ流石にきつかった。しかし、これからはまた、思いっきりVtuberができる!

 そして、春休みの間に事務所に入った。Vtuber事務所くりばいたる。全く名の知れてない弱小Vtuber事務所だ。何故私が事務所に入ったか、何故この事務所なのかはまた話す時が来れば話そうと思っている。


 とにかく今日は輝かしい高校生活の一日目だ!


 そんな感じで教室に入ったのはいいものの、私は孤立した。

この学校は県立の高校であり、しかも、私の中学校と同じ市に分布している。こう聞くと中学時代の友達が沢山いそうに思えるが、いないのだ。中学時代の友達なんて私はほぼほぼ持っていないのだ。

 私はまぁそんなもんか、と思って学校内でスマホ使用可能の自由な校風を利用して、スマホを立ち上げてYouTubeを開く。


「あ、上がってる」


 ふと同じ事務所のVtuberのチャンネルを見てみると、聖川虹のチャンネルが更新されていた。イヤホンを耳につけて動画を見てみる。

 内容は企画ものだった。Vtuberにしては珍しい。キズ●アイみたいなことをしているやつだ。いわゆる動画勢である。

 私はまるっきり配信勢だ。自分のチャンネルを見て動画の欄を見ても指で数える程度しかない。Shortsもそこまで上げてない。上げたほうが視聴者数は稼げて認知度は上がるかも知れないが、編集の手間は怠いし、チャンネル登録者数にものすごく繋がるかと言われてもそれが確定とは言えない。Shorts系YouTuberのチャンネルは大体視聴者数とチャンネル登録者数の差が激しいのだ。そう思っている。あくまで確定ではない。


 動画は編集の手間がかかって私は全然やらないから、こうやって必死に動画投稿する聖川先輩の姿を見ると凄いと思うし、私には到底できないとも思う。勿論、配信準備の手間は大変だが、私としては動画の編集の方が何倍も大変だと感じるのだ。なおかつ私は学生という身分のため、そこまでかける時間もさほどない。後に通信制が良かったと後悔するかも知れない……。


 そう心の中で葛藤していると突如誰かに肩を叩かれた。


「ひえっ!」

「うわぁ!」


 私の上げた変な声に相手方も驚いた。


「な、何ですか……ってあれ?」


 私はその相手方を見たことがあった。前の中学?いや違う。ここつい最近会った。そうだ彼女だ。


「あっー!彗星み……」


 彼女に口を塞がれてしまった。


「ちょっとー!今は学校なのでそっちの名前で呼ばないでください!」

「あ……。はい。でも私、貴方の本名知らないですけど……」

「こっちは貴方のVtuber名も本名もどっちも知らないんですけど」


 そうであった。前回、私の自己紹介の出番が結局回って来ずにそのまま解散してしまったのだ。よく聞いたら酷い話である。


「あ、そうか。私の垢はこれですよ」


 私は自分のスマホの画面を見せた。


「あっ、やっぱり」

「やっぱり?分かってたんですか?」

「声聞いたら大体分かりますよ」


 凄い。Vtuberオタクの極みだ。


「ちなみに私の本名は水野美梨花みずのみりかです」


 未鈴改め美梨花はそう自分を名乗った。


「よろしくお願いします。ちなみに私の名前は上川千穂うえかわちほです」

「いい名前ね。ところで突然だけど、敬語は無しにしない?ちょっと違和感が……」


 美梨花はそう私に提案した。その提案に私は首を縦に振った。


「それには同意」


 こうして、私の高校生活は幕を開けた。正直、ワクワクしている。こう、なんかVtuber仲間がいると、自然と親近感が湧く。もしかして、私、今日、学校での友達を作れたのか!?

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