第9話 まあ、頑張ってもダメだこともあるの件
そんなわけで、また戻ってしまったのだが、とにかくあのバカ(俺)に投資をさせないために色々やった。金主に怪情報流したり、会社にも牽制するために独立の動きをリークしたりと。まあ、すべて無視されたんだけど。そりゃそうだ。怪しい情報に一々対応していたら、魑魅魍魎が跋扈するこの世界では前に進めない。と言う訳で5回目のやり直しをしている訳だ。もうあれしかないな。
その日は体調不良と言うことで休んで病院に行った。但し、遠く離れた都心のクリニックだ。職場にアリバイ工作する必要があるか分からんが、目的の場所から近く、待合室で時間調整も出来、やつ(俺)の動きも監視できる。当時は金主と会う前にクリニックと同フロアの企業に訪問しているはずだ。その打ち合わせが延びて金主との約束の時間がギリギリになったから覚えている。
診察後に不自然にならない様に廊下を監視していた。しばらくすると焦った姿の俺が見えた。俺はそれを確認して鉢合わせない様に時間をおいて外に出た。そのまま裏路地を通って細い道の手前まで行って、そこで待っていた。何をか。それは車のエンジン音だ。ここら辺は一方通行が多く奴がビル前でタクシーを拾えば、この道まで回って大通りにでるからだ。しかもこの通りはほとんど車が通らず、タクシードライバーくらいしか利用しないと、ドライバーが言っていた。
そうそのタイミングを狙うのだ。まさかあたり屋をするとは思って無かったが仕方ない。覚悟が決まらないうちに車の音がした。幸いスピードは出てないようだ。タイミングを見計らって、走って車の前に出た。ブレーキ音共に目前に迫るタクシー。
やべ、これ死んだかも。と思うくらいの迫力だったが、2‐3メートル後方に飛ばされて軽く背中や腕を打ち付けたくらいで済んだ。目的は足止めだから必要以上に苦しんでいるふりをした。まあ、本当に痛くて立ち上がれないくらいだったが。ドライバーはすぐに出てきて、謝罪と共に怪我の具合や警察への連絡を行っていた。一方、奴(俺)は車を出ると、ドライバーに怒声を浴びせ、財布から万刷2、3枚叩きつけると、俺には目もくれずに大通りに走って行った。おいおい、それは倫理的にどうなんだ。乗客だから瑕疵はないけど、けが人が目の前にいるのに。トンデモナイクズだと怒りが湧いてきたが、でも俺なんだよな。うーん、ドライバーに介護されているうちに意識が・・・・
で、また夜勤の工場にいる訳だ。俺への怒りで判断が出来なくなった俺は、次の休みにスタンガンを購入して、一人で歩いている俺を襲った。さすがに殺すわけではないが、俺が俺を殺すってどういうことだ?軽く痛めつけて、しばらく動けないようにした。初めて留置場を体験できた訳だが、臭い飯を食べる前に、いつもの夜勤の工場に戻っていた。
考えるに、俺の行動は止められないのだろう。であれば、この不正を止めるしかループから逃れることは出来ないのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます