第5話 またまた期間工に転生したでござるの件

 まったく意味が分からない。気が付けば前回と同じ場所で同じようにドアを取り付けていた。仕事が終わり、部屋に戻ると同じように臭い。洗濯、食事をして頭の中を整理した。

 現在、ぶーやんに転生?二回目。

 前回は、ぶーやんの資産増やしてインサイダーで逮捕され、転生。

 前々回は、田中発動機の不正問題を発端とした、投資の失敗で破綻。転生。

 前回と前々回では転生後は同じ日時の同じ場所であるが、転生の瞬間は、異なる場所で異なる時間帯であった。必ずしも転生するわけではないのだろうか。無茶苦茶なことをして転生しなかったときのリスクを考えるとそこまでチャレンジする気はしない。では何か条件でもあるのだろうか。そもそも俺はどうなっているのだろうか。もしかしたら、初めの転生に原因があるのではないだろうか。

 そうだ、アメリカでの経済学の恩師が良く行っていた因果だ。結果をみて、その原因を説明するのは意味がないわけではない。すべての事象には因果があるから、果から因を知ることで、因から果を知ることが出来ると。仮に因が田中発動機不正問題に伴う俺への経済的、精神的ダメージであり、その結果が転生であるとすれば、田中発動機不正問題と俺の関係を断てば転生は無くなるのでは?

 と言うか、俺はここにいるが、本体はどうなっているのだろう。スマホで俺のスマホに連絡しようと思ったが、よくよく考えたら、登録した番号以外繋がらない様に設定しており、そもそも、存在しているかすら分からない。まずは、俺が生きているか?調べてみよう。

 まずは、会社のHPを見てみた。ファンドマネージャーとして俺の名前と写真が載っていた。これは前と変わりがない。他のメンバーも以前通り。よく分からないが俺とは別に俺は存在しているようだ。であれば、これから起こることを教えれば勝手に解決してくれるだろう。だが、一番の問題は俺は他人を信用しないと言うことだ。急に地位も名誉も無い知らない期間工からの情報など取り合うことはまず無い。魑魅魍魎が住まうあの業界で情報に踊らされれば、即敗北につながる。だから、長い時間をかけて、信頼出来る情報ネットワークを築き、その情報をさらに自分の目で判断しなければならない。いずれにせよ自分の目で確認しようと思い、眠い体に鞭を打って、昼に間に合うよう俺のオフィスのあるビルに向かった。

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