第3話 今の状況は把握しないと始まらない件

 俺は昼過ぎに起きて、シャワーを浴びてPCに向かった。最高級とは言えないが、この部屋には似合わない高スペックなので助かる。習性で、ナスダックの株価指数を呼び出したが、不思議なことに頭に入ってこない。認識はしているが理解ができない。おそらく、俺の意識にぶーやんの知能がついて行けないのだろう。不必要に度の強い眼鏡をかけたり、高熱で頭が回ってない状態に近いと言える。これらの違和感、不快感はあるが、それは俺の意識であり、ぶーやんの肉体には当たり前の状態であることは理解できている。困ったのは、ある程度の資産があるので、こんなところで馬鹿正直に働かずとも、デイトレードでここの給料30年分くらいは軽く稼げると思っていた。もちろん、俺本体なら片手間で大丈夫だが、ぶーやんの体では即決する判断力、理解力が圧倒的に不足している。塩漬けで稼げる金など知れている。精々5年で一千万位か。それなら信用できるトレーダーに金を預けるか。いや、信用できる人間なんていない。そう思えば、俺の人生で信用できる奴なんていたか。会社の人間は成果の取り合い、足の引っ張り合いしかしないし、女は金目当て。おれも金で買うだけ。ぶーやんより一桁は上の稼ぎと資産があったが、下手したらぶーやんのほうが幸せだったのかもな。そう考えると、急に体を取られたぶーやんに申し訳ないような気がしてきた。まあ、そんなことを考えてもしょうがない。亀の歩みのようなトロさで、ニュースを読んでいたが、重要なことを見逃していた。今日は2023年の11月XX日。俺がホテルで倒れた日より2か月も前の日付だ。オカルトには興味が無いので、よく分からないが、死んでブーやんの体に憑りついたと思っていたが、そうではないようだ。このことが何を意味するかは分からないが、田中発動機の不正問題が表に出る前の状況と言うことだ。しかも工場内でもそんな雰囲気は微塵も無い。つまり、俺だけがこの情報を知っている。俺は戦略を練り、準備を始めた。この無能状態でも一攫千金できる方法を。

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