鉱石ダンジョンで鉱石採集

 必要な鉱石は、二種類。


 水に強く錆びにくい青鉄鉱と、火に強い赤鉄鉱だ。


 青鉄鉱で作ったゴーレムは栽培の作業用。

 そして赤鉄鋼で作ったゴーレムは錬金の作業用に作るつもりだ。


 錬金の本を読んでいる間に気がついたのだが、栽培の作業ができるなら、当然錬金の作業もできるはずだ。


 薬草の栽培と種の回収、そして錬金によるポーション作り、俺はこの作業の流れをすべて自動化する。


 こうすることで俺が手をかけなくても自動で大量のポーションを作る事ができる。

 そしてショートカットした時間を、俺はより金を稼いだり、自身を強化する時間に宛てることができる。


 必要な作業を自動化すればするほど俺自身が強化されていく。

 セレーネはそういうこと学ばせたかったのだろう。


 ちなみに土くれから作れるゴーレムもあるようだが、コストが安いかわりに単純作業しかできないのと短時間しか稼働せず燃費も悪いため、今回は不採用となった。


「とりあえず、目につく鉱石は掘っていくか」


 周囲に魔物は見えない。

 ピッケルで掘っても問題ないだろう。

 すると目の前にウインドウが表示された。


「お、さっそく鉱石発見」


 ここの洞窟は狭い上に、鉱石に近づくと知恵の指輪が自動で教えてくれるので便利だ。

 ウインドウが表示されたのは俺の足の付根くらいまである大きさの紫色の鉱石。


「これは紫鉱石か……」


 名前の通り紫色の鉱石で、電気に強い鉱石のようだ。

 とりあえず採掘しておく。


『《紫鉄鉱》×10を手に入れました!』


 紫鉱石が十個採れた。

 どうやら鉱石の大きさによって採れる量が違うらしい。


「よし、この調子で採掘していこう。時間は有限だ」




 それからしばらく、俺は採掘をして回った。


「結構貯まったな」


 洞窟を歩きながら俺はアイテムボックスの中身を確認する。


──────

 《赤鉄鉱》×103

 《青鉄鉱》×119

 《紫鉄鉱》×87

 《緑鉄鉱》×66

 《黃鉄鉱》×34

 《白鉄鉱》×10

 《鉄鉱石》×79

──────


「ここらへんの鉱石はだいたい採り尽くしたけど……」


 そう行っていると、開けた場所に出た。

 洞窟の中に出来た、ドーム型の広場だ。


「まあ、やっぱりいるよな。ダンジョンなんだから」


 俺はそう言って神王鍵を取り出す。

 そこにはゴーレムがいた。

 五メートルほどの大きいゴーレムが一体と、そのゴーレムに付き従うようについている小さなゴーレムが五体。


「悪いけど、動力源が必要なんだ……もらってくぞ」


 俺はゴーレムに向かって神王鍵を六回振り抜いた。

 ゴーレムが塵となって消えていく。


──────

 ドロップ品:

 《鋼ゴーレムの魔石》×1

 《鉄ゴーレムの魔石》

 《ゴーレムの心臓(B)》×1

 《ゴーレムの心臓(C)》×5

 《鉄インゴット》×10

──────


 ゴーレムの心臓が俺の欲しかったゴーレムの動力源だ。

 アイテム名の後ろについているアルファベットは、調べたところ動力源としてのランクを表しているようだ。


「ただ、まだ足りないな……」


 ゴーレムの心臓は最低であと十個は欲しい。


 と、その時広場から続いている道の先から、音が聞こえてきた。

 ガチャガチャと金属がこすれる音と、複数の足音。


 姿を表したのは、人サイズのゴーレムだった。

 ゴーレムを構成する素材を見る限り、さっきの鉄ゴーレムよりは強そうだ。


「ちょうどいい。もっと沢山動力源が欲しいところだったんだ」


 俺はアイテムボックスから魔力ポーションを取り出すとそれを飲み干し、神王鍵を構えた。




『おめでとうございます! 57レベルにレベルアップしました!』


 最後のゴーレムを倒し終えたところで、レベルアップを告げるウインドウが目の前に現れた。


「これで全部か……」


 これ以上ゴーレムの足音が聞こえないことを確認して、俺はドロップ品を確認する。


──────

ドロップ品:

 《鉄ゴーレムの魔石》×19

 《ヒヒイロカネゴーレムの魔石》×1

 《ゴーレムの心臓(S)》

 《ゴーレムの心臓(C)》

 《ヒヒイロカネのインゴット》×5

 《鉄インゴット》×65

──────


 ドロップ品のなかにやけにランクが高い魔石と心臓があった。


「ヒヒイロカネだから……あの赤い色のゴーレムか」


 このヒヒイロカネはたしか、伝説の鉱石かなにかだ。

 道理で一個だけ飛び抜けて強そうな見た目をしていたわけだ。

 ついでにヒヒイロカネのインゴットまで落としてくれている。

 これはありがたい。


「さて、十分鉱石も動力炉も十分集まったし帰るか……」


 このあとはゴーレムの錬金も残っているのだ。

 俺は神王鍵をしまってウインドウを閉じると、もと来た道を戻っていった。





「さて、ここからは錬金の時間だ」


 俺の目の前には、直径二メートルほどの錬成陣が描かれていた。

 鉱石ダンジョンから戻ってきた俺は、錬金術の道具が揃っている工房へとやってきていた。

 この錬成陣はさいしょから工房の石畳の上に彫られていた錬成陣だ。

 セレーネは後ろの方で俺の行動を見守っている。

 手に錬金術の本を持ち、ゴーレムの作り方を確認する。


「なになに……錬成陣のなかに素材を置いて、「錬成」と唱える、と。……それだけで良いのか?」

 思ったよりも簡単な工程だ。

 とりあえず青鉄鉱とCランクのゴーレムの心臓を置く。


「錬成」


 俺が言葉を唱えた瞬間錬成陣が光り、次の瞬間には人と同じくらいの背丈のゴーレムが出来上がっていた。


「おお、できた……」


 青みがかった金属で出来たゴーレムが錬成陣の真ん中に立っている。

 しかしいつまで経っても動く気配がない。


「ええと……そうだ。命令を出さないといけないのか」


 俺はそこでゴーレムに命令が必要なことを思い出した。


「畑にいって薬草を栽培してくれ」


 俺がゴーレムに総命令すると、ゴーレムはゆっくりと動き出した。


「よし、もっと量産しよう」


 その後、俺はゴーレムを量産した。

 青鉄鉱のゴーレムを十体、赤鉄鉱ゴーレムを十体、雑用のための鉄ゴーレムを五体と、合計二十五体のゴーレムを錬成した。

 全員にそれぞれ指示を出すと、そろそろ日付が変わる頃だった。

 体力の限界も来ていたので、俺は一度家に帰って眠ることにした。


 そして翌日。


「よし、俺は今日、モンスターダンジョンの上層をクリアする」


 俺は石の扉の前でそう決意を新たにしていた。

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