貴重なドロップ品を持ち込んだ結果。
「SSSレアアイテム、『神王鍵』……?」
俺はウインドに書かれている文字を読み上げる。
「あのドラゴンを、一撃で……」
俺はこの武器の威力の高さに恐れ慄く。
そして俺はそこで首を捻った。
「でもこれ、鍵じゃなくて剣だぞ……?」
恐らく手に持っているこの白い剣のことなのだろうが、どうみても鍵には見えない。
とりあえず不可解だったので、アイテムの詳細な説明が載っている説明欄を指でタップする。
『ガチャ』から出てくるアイテムには、ゲームで言ういわゆるフレーバーテキストのようなものがついているのだ。
すると追加のウインドウが出現した。
「えーと、なになに。『かつて、運命という鎖を破り、世界の理を外れた人間がいた』……」
『運命という世界の法則から自由となった男は、誰よりも強い力を手に入れた。
その力を使って男は自分の王国を作り、自らを神王と名乗った。
神王は死の間際、自らの力の全てを注いでダンジョンを創り上げた。
そのダンジョンは『神王ダンジョン』と呼ばれ、自分と同じく運命の拘束を外れた人間の育成を目的として、どの世界からも隔離された場所に存在している。
そのダンジョンに入るための鍵がこの神王鍵である。
この神王鍵は元の持ち主と同様、運命から外れた者にしか扱えない。
また神王鍵は神王剣とも呼ばれ、剣として使えば世界すら断つことができる剣となる。』
「なるほどな……」
フレーバーテキストにはこんなことが書いてあった。
運命とか云々はあまり意味が分からなかったので読み飛ばしたが、このアイテムがどんなものかは理解した。
続いて、剣の性能について見てみる。
『神王剣は神王鍵の別形態である。神王剣は使用者の魔力を使い、万物万象を断ち切る斬撃、『運命切断』を放つことができる。また、神王剣は朽ちず、欠けず、折れず、切れ味が落ちることもない』
「控えめに言って……やばくないか、これ?」
まず剣としての能力。
運命切断、というのは分からないが、低レベルの俺がドラゴンの首を切り飛ばせたんだから「世界すら切ることができる」というのは本当なのだろう。
俺の考えだが、さっきの空間の切れ目は空間ごとドラゴンを切ったんじゃないだろうか。
それだと暴風が切れ目に流れ込んでいった理由もわかる。
「感覚的には魔力の三分の一程度の使用か……」
神王鍵を引いた分、最後に『運命切断』で使用した分で俺の魔力はちょうど残りの魔力は三分の一程度になっていた。
「さすがにあの威力をぽんぽん連発はできないってことだな。でも、威力を考えたら破格の強さだ」
俺にもっと魔力さえあれば……。
いや、そうだ。ないものを嘆いたって仕方がない。
俺は気を取り直す。
「それに、このダンジョンって……本当ならとんでもないことだぞ」
しかもテキストを見るに、このダンジョンは多分俺専用ダンジョンだ。
「俺専用のダンジョンって……リソース獲得し放題じゃん」
まず、他のパーティーメンバーと魔物からドロップした魔石やドロップ品を奪い合う必要がない。まあ、これはソロでも一緒だけど。
だが、ダンジョンの中にある資源や素材はすべて俺のものになるということだ。
まだダンジョンの中を見たわけじゃないが、その事実だけで心が踊る。
「ヤバい……口がニヤけそうだ。……ん?」
と、そこで俺は視界の端っこにウインドウが表示されているのに気がついた。
神王鍵に気を取られていて気が付かなかった。
そのウインドウを見てみると。
『おめでとうございます! 54レベルにレベルアップしました!!』
「は、はぁ!?」
俺は思わず叫んでしまった。
さっきまで俺は12レベルだったのに、40レベル以上一気にレベルアップしていたからだ。
しかしすぐに「いや、そうか……」納得する。
「あんな強そうなドラゴンを倒したもんな。経験値もそれなりに入るか……あれ? てことは俺のステータスってどうなってるんだ」
レベルアップしたということはステータスが上昇しているということだ。
一気に40レベル以上あがったのだ。
かなりステータスは向上しているはず。
気になってステータス画面を開いて見る。
名前:星宮尊
レベル54
魔力:9→33(UP!)
攻撃力:15→58(UP!)
防御力:13→37(UP!)
持久力:19→47(UP!)
敏捷性:14→41(UP!)
称号:【運命から外れし者】【神王鍵保持者】
スキル:『ガチャ』
「なんだこのステータス……」
俺はウインドウを見てため息を付いた。
「50レベルも上がったのに、なんでレベル30の平均ステータス以下なんだよ……」
30レベルの平均ステータスは全ての項目が50以上。
あいも変わらず、自分の冒険者としての適性の低さに嫌になる。
「でも、冒険者として最低レベルのステータスからは脱却したし、魔力も増えたからな……」
魔力が増えたお陰で『運命切断』は10回は撃てるようになった。それだけでも良しとしよう。
というか、そもそもイレギュラーモンスターに遭遇して生き残った上に、こんな壊れ武器をゲットできた時点で超絶ラッキーなのだ。
「とりあえず神王剣の性能は武器として破格だ。これさえあれば高レベルダンジョンにだってソロで潜れる……」
ウインドウをスクロールしながら、俺はぶつぶつと呟く。
「……あ、そうだドロップ」
俺はそこでようやくドラゴンを倒していたことを思い出した。
ドラゴンの死体があった場所を見てみると、すでにドラゴンは完全に塵となって消えていた。
だが、地面には手のひらより大きい魔石とドロップ品が落ちていた。
「すごい、こんな大きい魔石みたことない……! それにこれ……ドラゴンの角!? 低確率ドロップ品じゃないか!!」
魔物は倒すと魔石を落とす。
しかしドロップ品を落とすことは稀だ。
その中でもそもそも討伐率が少なく、低確率でしかドロップしないドラゴンの角は、超貴重品なのだ。
「でもこれ……巾着には入らないな」
というか、ドラゴンの魔石ですら入らないだろう。
「これ、普通に持ってかえるしかないな……」
俺はため息をつきながら、神王鍵を腰のベルトに差し、ドラゴンの魔石と角を両手で抱えて地上へと戻ったのだった。
服もボロボロの俺がドラゴンの角を抱えている姿は、かなり目立っていた。
***
とりあえず、ドラゴンの角と魔石はギルドの買い取り窓口に持っていった。
ギルドとは国が運営する冒険者管理機関のことだ。
国が運営しているので素材や魔石を安い値段で買い叩かれることがなく、冒険者は大抵ここを利用している。
玄人や素材の知識がある人間は民間の企業や個人に直接売りに行くそうだが。
「あの、すみません。買い取りをお願いしたいんですが」
「はい、冒険者身分証と素材をこのトレーに置いてください」
「じゃあお願いします」
俺はトレーの上に冒険者身分証とドラゴンの魔石、ゴブリンの魔石が入った巾着を乗せ、ドラゴンの角は大きすぎてトレーに乗らなかったのでその隣に置いた。
「では確認いたしま……え?」
トレーの横に置いたドラゴンの角と冒険者身分証を見た瞬間、受付の女性が目を丸くして声を上げた。
「え、えっと……他のお仲間の冒険者様は……?」
「あ、いえ、いないんです」
本当は追放されただけなのだが、それは正直に言うのは憚れた。
「お一人様ですか?」
「はい、そうですけど……」
俺は首を傾げながら肯定する。
「…………うそ」
すると受付嬢の表情がみるみるうちに青く染まった。
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