マッチングが成立しました。

牝-あ



 社会人になってからの新生活にも慣れ始めた私はネットの広告でみたマッチングアプリに登録した。曰く「思い通りの人と出会える」らしい。

 容姿にはあまり自信がない方だったが登録してすぐ驚くほどの数の「いいね」を貰い、その中で趣味の合いそうな人とメッセージを交わし、あれよあれよと映画デートをすることになった。

 デート当日、久しぶりにオシャレをし、とっといていた高い香水も使った。鏡の前に立つと浮かれている自分が映り、少し恥ずかしくなった。

 最寄駅に着くとどうやら電車が遅れてるらしく、彼にその旨を連絡することにした。



 マッチングアプリを始めて半年、やっと女の子と連絡が続きデートまで漕ぎ着けた。

 中高は男子校で大学でも浮いた話はなかった俺にやっと春が来ると思うと胸が躍る。

 デート当日、気合を入れて早めに待ち合わせ場所についてそわそわしていると後ろの方から声をかけられた。


「ゆうじさん、ですか?遅れてごめんなさい」


 振り向くとすらっとした体型で体にフィットするようなクリーム色のワンピースを着た女性が立っていた。彼女だ。


「は、はい、みなみさん?いやいや、僕こそ早くきすぎちゃって」


 返事をすると彼女ははにかんで手を繋いできた。


「それじゃあ、いきましょうか」


 いきなり手を繋いでくれるなんて、脈しかないんじゃないか?なんてことを考えていると彼女は手を引っ張ってズンズンと人混みの中を歩いている。気づくと人通りの少ない、如何わしいお店が立ち並ぶ通りになってきた。


「あれ、みなみさん、今日は映画デートですよね?映画館から離れてませんか?」


 すると彼女は目線だけこちらを向けて頬を染めながらこういった。


「だめ、ですか?」


 ダメじゃなさすぎる!ここで引いたら男じゃない!覚悟を決めろ、俺!

 ホテルに入り、部屋を決めていると彼女が胸を僕の肘に押し当ててくるのを感じた、なんてセクシーなんだ。

 部屋に入り、あれよあれよと服を脱がされる俺、ブラとパンティーだけになる彼女、初デートでいきなりホテルなんてなんだか世界が俺に都合が良すぎる気がする。


 緊張とバツの悪さでベッドの上で俺にまたがる彼女から目を逸らすとここまで見る余裕のなかったスマホの画面がチラリと見えた。


「ごめんなさい、電車の遅延が思ったよりもひどいみたいで着くのが1時間以上遅くなっちゃいそうです。」


 え?


 鮮明にそう映る画面を見る俺の顔を自分の方に向き直させ、彼女は俺にキスをした。きもちよすぎる、なにも考えられない。見間違いだろう。しあわせだ。しあわせだ。





牝-い


 彼に遅延の連絡をしてから1時間半、やっと待ち合わせ場所についたものの彼からの連絡はない。流石に待たせすぎてしまって帰ってしまったのだろうか。仕方ないので帰ろうとすると後ろから声をかけられた。


「みなみさん、ですか?」


一目見て分かった。この人が私の運命の人なんだと。

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