大切な家族
ダンクが死んでしまった。
私とお母さんが小さい頃からずっと家にいる大きな雑種犬だった。
私が小学生の時にクラスの男子にいじめられたときも
お母さんの彼氏に私が殴られたときも
中学生の時にできた年上の彼氏に連れられたカラオケボックスで彼氏の友達数人にまわされたときも
ホテルで客に首を絞められたときも
家に帰ればダンクがいて私の顔を舐めて慰めてくれた。
ダンクには不思議なところがあった。
私は嫌な思いをした次の日、決まってダンクは私のベッドの下に何かを置いてくことがあった。
ある時は青い筆箱。中には私が無くしたシールが入っていた。
ある時は銀色のピアス。少し血がついていた。
ある時はリュックサック。中には人の陰茎が入っていた。
ある時は男物の財布。中には人の指と大量のお金が入っていた。
ダンクは私の代わりに仕返しをしてくれていたのだ。
ダンクは散歩以外では外に出ることはないし夜はずっとゲージの中でずっとしている大人しい犬だった。
だからダンクは不思議な力を使って私に嫌な思いをさせた相手にささやかな仕返しをしているのだと確信していた。
そして私はその力を利用していた。嫌なことがあってもきっとダンクが仕返ししてくれる。
だからどんないじめや暴力を受けても心に余裕があった。
先週、お母さんをわざと怒らせた。お母さんは私の頬を叩き、家を出て行った。
そのあと私はすぐにダンクのところへ行き、彼の顔を胸に抱き寄せて大袈裟に悲しんだ。
さあ、可愛い私のダンク。あの女にとびっきりの仕返しをして!あいつの大切なものを奪ってきて!
ダンクはじっと私を見つめたあと、赤く腫れた頬を優しく舐めた。
次の日、ダンクは私のベッドの下で眠るように死んでいた。
死んでしまったダンクを抱き寄せてお母さんは狂ったように泣き叫んでいた。
ダンクは私が生まれる前にお母さんがどこからか拾ってきた大切な家族だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます