ひとくちホラー:幽霊は脳で産まれる

@origutinanonine01

金魚



 私は生き物を大切に出来ない子供でした。

蝉を捕まえては翅をもぎ取り

学校で飼われている鶏を蹴飛ばしていました。

 決して面白かったわけではありませんが、

どうしてだか生き物に対してひどいことをしてしまう人間だったのです。


 ある日、父がお土産に金魚を持ち帰りました。

赤と黒の斑模様の立派な金魚でした。

私はそれに「ブチ」と名づけ、自分の部屋に水槽を置いて可愛がりました。


 ある夜、夏の暑い日でした。

私は夢の中で自分の部屋の戸の前に立っていました。

閉じられた戸の向こうから、ブクブクと水槽に酸素を送る音ともうひとつ、

骨付きの鶏肉を骨ごと齧り付くようなぼりぼりとした音が聞こえてきました。

静かに、戸を開けると、水槽の青白い照明に照らされて、

毛むくじゃらの猿のようなものが背中を丸めて金魚に齧り付いていました。


そしてそれは私を見ると、にっと笑ってこう言いました。


「お前は次に人間を飼う。たのしみ」


 目を覚ますと私の口の周りにベッタリと魚の鱗がついており、

水槽の中は空っぽでした。


 あれから13年経ち、私には婚約者がいます。

彼は子供を望んでいます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る