第9話

 そして姫の予感は的中したのだった。

 いったん結ばれてしまえば、またその相性が良ければ、男と女は簡単だ。


 帝は姫の元に足しげく通うようになった。

 相手が帝となれば反対するもの、反対できるものはいない。


 そんななか、姫のもとに月の王の使者が訪ねてきた。


「月にお戻りください。八月十五日の夜、お迎えに参ります」

 使者はそれだけを言い、姫の前から消えた。


 ついに来たかという感じだった。帝に会う前なら、さぞかし喜んだだろうに。

 姫は暗い気持ちになり、打ち沈んだ。


 そんな姫の様子に気付いたのは翁だった。

 隠しておけることではない。姫はすべてをうちあけた。不思議な話を翁はすぐに飲み込んだ。


 姫の存在自体が”不思議そのもの”なのだから、もう何が起きてもおかしくないと思っているのだろう。


「させぬ! 必ずやお前を守ってみせるぞ!」


 翁から話を聞いた帝は、姫を抱きしめて何度も言った。

 それでも無理なことは無理なのだ。


 その温かさは姫を泣かせはしたが、姫の諦めを取り除いてはくれなかった。

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