実験隊A(1)

あれからさらに成長して私は4歳半になった。姉は小学生2年になった。デビュ予定まで2年。そろそろ、スタートを切ろう。


歌い手、いや接客業で何が一番必要か。

それは、コミ力とどれほどまで客の望みを叶えれるかだ。

オタクが何を望んでいるかはよく分かる。だから、後半は問題ない。


問題は前半だ。前世の仕事は、簡単にいえばエンジニアとも言える仕事だ。

営業?そんな言葉はない。


ユニクロを作った人の名言で

『失敗もひとつの経験であり、試行錯誤の上に成功が成り立つもの』というのもある。成功するためには、その前大量に失敗しないといけない。


つまり、一発本番で配信するなんてダメだ。

なので、私は大量の架空人物を犠牲にすることにする。

行動に移すためにも、まずは姉の了承だ。


ガチャ


タイミングよく帰ってきた姉。

母との会話を済まして、私たちの部屋に入ってくる。

そのタイミングに合わせて


「歌い手にならしてください!」


父親に娘をもらう男のように綺麗なスライリング土下座を決めた。


「えーと。どうしたの急に?」


「憧れたので、歌い手になりたいんです。そのためにスマホを貸してください」


土下座のまま続ける。


「・・・」


返答はない。ダメなのか、、


「勿論!私にできることはどんどん言ってちょうだい!」


トン

姉は自分の胸を叩いて、自信満々に返事する。


「ふー」


安堵で思わず息が漏れた。

無事に娘を貰えた男もこんな気持ちなんだろう。

そう思いながら、今考えている計画を伝える。


「いいわね。まずは、どういうキャラが売れるか知るってということね」


「まあそんなかんじ。早速、スマホ貸してください」


「勿論、歌みた出すの?」


「うん。推しの歌みたで歌詞覚えてるのだけど。静かにしてね。」


息を吐いて、録音アプリを開く。


ポチ


できたことを確認して、歌詞を思い出しながら気持ちを込めてうたう。

没入型の歌い方だ。


🎶🎶🎶🎶🎶🎶


終了。


「はーは。」


息切れがしんどい。


「はー。お姉ちゃん、どうだった?」


「すごい。すごい。絶対バズるわ」


「ありがとう」


正直言って、身内の評価は当てにならないが感謝をしとく。

笑顔動画とTwittorの垢をつくる。名前は適当にAとしとく。どうせ、捨てる架空の人だ名前はどうでもいい。


そして、明日の16時に歌みたをあげることと、今日の20時にライブすることを告知。


速攻で、音をダウンロードして、あまり発達していないMIXサイトで調整していく。

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