第33話 部活動


「話を戻すけれど……あなたは部活を作りたいのよね?」

「ああ。でも部員数とか活動内容とか、部活にするには色々と問題があって」

「ちなみに部員数は?」

「二人だ」

「二人って……」


 田町は呆れ気味にため息をつくと、目を細める。


「……あなたね、部活っていうのは最低5人でやっと認められるのよ?」

「分かってる! だからこそ何とかできないかお前に相談してるんだろ」

「無茶がすぎるわよ。それと一応聞いておくけど、あなたはどんな部活を作るつもりなの?」

「どんなって……俺が作りたいのは東京の街を散歩して、写真撮ったり食べ歩きしたりして楽しむ部活っていうか」


 ざっくりと短く説明すると、田町はさらに頭を抱えた。


「何その部活……ただ遊び呆けてるだけじゃない」

「ぐっ……」


 反論したいけど、今回ばかりは田町の言ってることがごもっともなんだよなぁ……。

 俺と雪野にとっては病気の治療法に繋がるかもしれない二人時間だが、はたから見たらただ二人で遊んでるだけなのだ。


 そんな活動を部活動として認めてもらうのはやっぱかなり難しいよなぁ……。


「ちなみにそのお友達はどこの誰なの?」

「え?」

「だってあなたぼっちじゃない。お友達と話しているところなんか一度も見たことないし」

「165キロのドストレート暴言やめろ」

「だからどこの誰なの? それとも妄想フレンドだったりするのかしら?」


 雪野の事は話さないつもりだったんだが……。

 でも前に田町には、雪野と居るところを見られてるからいいか。


「保健室の雪野小道だよ」

「……ああ、なるほど」


 田町はこくこくと頷いた。


「そういえばあなた、雪野さんと仲良さげにしていたものね。じゃあ放課後に出掛けているのは、雪野さんと?」

「ああ、そうだよ」

「それを部活にしたいと?」

「お散歩部でも何でもいいんだ……どうにかならないか?」

「だから、そもそも部活動の最低ラインは5人よ。どうしてそこまでして部活にしたいの?」

「それは……」


 俺はどう伝えるべきか悩む。


 雪野のことはオブラートに包んで説明しないといけないが、どう伝えるべきなのか……。


「帰宅部だったあなたが部活を作りたいなんて言うわけないし、それなら雪野さんが作りたいと言っているのかしら?」


 田町は鋭い推察で全てを察したように言った。


「ああ、そうだよ。雪野が作りたいって言ってるんだ」

「……それなら、少し力を貸してあげてもいいわ」

「それならって何だよ! 俺からの頼みなら貸さないってのか?」

「ええ、そうよ」


 田町は「当たり前だ」と言わんばかりに言い放つ。


「でもお前、雪野とは知り合いでも何でもないんだろ?」

「そうだけども……あの子のことは、少し心配だったから」

「し、心配?」

「みんなは雪野さんのことを見た目の可愛らしさで気にしないみたいだけれど、保健室登校をしているってことは、何かあるのは間違いないのだから」


 田町は雪野のことを色眼鏡で見てなかったってことか。


「きっと、何かあるのよね?」

「…………あ、ああ」

「あなたも答えづらいでしょうからこれ以上は聞かないわ。でも……協力はしてあげる」

「本当か!?」

「ええ。微力だけど少しは私から先生と生徒会に掛け合ってあげてもいいわ」

「おお! ありがとう田町!」

「……ただ、良い返事は期待しないで。部活は作れない前提で話すのだから」

「あ、ああ」


 でも田町が掛け合ってくれるなら、希望があるかもしれない。

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