第15話 天使に聞きたい


 放課後になると、俺は保健室へと向かう。


 今日は木曜日だ。

 保健委員の仕事は金曜日の明日までだから、雪野と一緒に仕事をするのもあと二日、か。


 でももし放課後にお出かけするのが日常になったら、雪野との時間がまだ続くのか……。


「それもこれも雪野次第、なんだよな」


 俺に決定権はない。

 雪野とこれからも一緒に出掛けてたりするのかは、雪野が決めることだ。


「あいつが嫌って言ったら……終わり」


 あの雪野に「嫌」とか言われたらそれはそれでショックだよなぁ……。


 それに俺自身の気持ちは……まだ分からない。


 これまでは一人で『自分時間』を楽しんできた。


 昨日みたいに雪野と一緒に歩くのは、正直に言って楽しかった。


 誰かと一緒に歩くのがあんなに楽しかったなんて知らなかったし、雪野と知り合ってなかったら知る由もなかっただろう。


 俺は雪野と……。


 考えながら歩いていたら保健室の前に着いていた。


「…………っ」


 ……緊張してるのは、なぜだろう。


 他人にどう思われているかなんて、今まで気にして来なかった。


 でも今は……雪野が俺のことをどう思ってて、これからも一緒に出掛けたいと思ってくれるのか、気になって仕方ない。


「失礼します」


 保健室に入ると佐野先生はおらず、雪野だけが机の前にいた。


「ゆ、雪野」

「……お仕事、行こっか」

「お、おう」


 佐野先生がいないんだし、俺が話を切り出さないといけないのか。


 雪野がまた俺と、出かけたいのかどうか。


「どうしたの? 温森くん」

「なっ! なんでもない。行くか」


 俺はトイレットペーパーのカゴとチェック用紙を手に取ると、久々の備品確認に向かった。

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