第6話 天使とお出かけ02


「おまかせって事なら俺の行きたいと思ってた所に行くけど、いい?」


 天使はこくり、と頷く。

 よし、それなら遠慮なくやれるな。


 天使の了承も得たので、俺は今日の街歩きルートを瞬時に考える。

 

 今日は授業が6限までの日だったので、現在の時刻はまだ16時過ぎ。

 俺がずっと行きたいと思っていた17時までの"アレ"を食べに行く時間はあるな。


「雪野ってさ、抹茶は食べれるか?」

「うん。抹茶、超好き……」


 はい。今日も天使様の『超好き』をいただきました。


「じゃあ、今から抹茶スイーツ巡りをするのはどうだ?」

「抹茶……! スイーツ……! 巡り……!」


 3段階に分けて小声の語気が強くなる。


「行きたい……っ!」


 反応が良くて助かる……よし、決まりだな。

 天使はいつも無表情で何に関しても無関心なイメージだったから、こうやって好きなものを知るとだいぶイメージが変わる。

 実際、以前までの俺の中の天使(雪野小道)のイメージは、周りが天使と呼んでいるくらいだから超絶美女で『大天使ミカエル』くらい偉大なイメージだったのだが、最近天使と過ごすようになってからは、彼女のことを某マヨネーズのパッケージにいる天使くらい小さくて可愛いものに思えている。

 まあ小さくて可愛いのは間違いないけど。


「でも……どこで抹茶のスイーツ食べる? 抹茶がたくさんあるってことは京都?」

「いやいや、今から京都行ってたら今日中に帰れないだろ」

「プライベートジェットなら……ワンチャン」

「んなもんあるか!」


 ボケを入れるタイプじゃないとないと思うし、おそらく本気で言ってたと思われる。


 天使って意外と天然なんだな……。

 このままこいつの天然に合わせてたら日が暮れるぞ。


「お泊まりなら、お母さんに連絡しないと」

「ちょっと待て! 言っておくけど今から行くのは都内だし! ここから10分くらいだから!」

「へ? 東京に……抹茶?」


 天使は目を丸くしていた。

 抹茶のスイーツなんて都内にも山ほどあるだろ……と思ったが、天使は普段から外出できないらしいし、世間に疎いのかもしれない。丁寧に説明しないと。


「抹茶はさ、どの世代にも需要があるし、特に最近は洋風のスイーツに抹茶を落とし込むのが流行ってるんだ」

「あ……確かに動画サイトでよく見るかも」

「だろ? だから東京のスイーツ店も抹茶のスイーツを増やしてて、今から行く場所にも人気の抹茶スイーツ店があるんだ」

「へぇ……早く、行きたいっ」


 どうやら天使のテンションもかなり上がってきたことだし、さっさと移動しますか。


「よし、なら行くか……"浅草"へ」

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