第24話 居住棟の探索

 その日の午後、ソンジが起きてきてアイザックを稽古に見送ったあと。夏美はソンジにあるお願いをしてみようと思っていた。

「ソンジさん」

「はい、なんでしょう?」

「この宮殿の中を、少し案内していただけませんか? 昨日、議会場に行くときに思ったんですけど、すごく広いですよね?」

「ええ。ほとんどの議員や使用人がここに住んでおりますから。では、案内いたしましょうか。その前に、少しだけ書類仕事を片付けてもよいですか?」

「もちろんです!」

 ソンジが書類仕事を片付けるのを一時間ほど待ってから、二人は執務室の外に出た。

「ではまず、この宮殿の地図をお渡ししましょう」

 ソンジから、一枚の紙が渡される。

 この宮殿は大きく3つの棟に分かれているらしい。一つが使用人たちの居住区や倉庫などがある棟、そして中央にあるのが宮殿の中枢機能が置かれている本殿、そしてもう一つが貴族たちの暮らす居住棟だった。

「議会場はこの真ん中にあります。我々が普段過ごしているのはこちらの居住棟ですね。とりあえず、主要な部分は歩いて巡ってみましょうか」

「はい!」

 ソンジの案内で、居住棟を歩く。居住棟と言っても、貴族たちが生活に不自由しないように図書室や遊戯室、音楽ホール、会食に使用するいくつかの小食堂、外部からの行商などが集まる大広間などがあった。

「すごいですね、なんでもあるんだ……」

「ええ。貴族の方たちやそのご家族が不自由のないよう、あらゆる施設が作られています。裏には訓練場がいくつかあります。ここでアイザック様は剣や銃の稽古をなさっていますね」

「それって……見ることできたりするんですか?」

「ええ。この時間帯でしたら、剣の稽古をなさっているのではないでしょうか。行ってみますか?」

「はい!」

(稽古とか、真面目にやってるのかな? アイザック……)

 普段あまり感情を表に出すタイプではないし、これまでの議会での態度などからしても、もしかしたら稽古に手を抜いているかもしれない。

(あんまりアイザックが機敏な動きしてるところとか、想像つかないな……)

 汗をかくようなことは嫌いそうだとすら思ってしまう。期待半分、期待しないでおこうという気持ち半分で、訓練場に向かうソンジについていった。

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