【ネタバレ有り】劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の感想と亡霊の話です。

杉林重工

【ネタバレ有り】劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の感想と亡霊の話

※ただの架空のお話です。架空の登場人物が、 劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』 の感想を喋るだけです。

 ちなみに、著者は劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を死ぬほど楽しみました。折見て二回目も行くと思います。


 トウキョウ都マチダ市。俺はこの、汽水域みたいな土地が好きだ。トウキョウ都に属す癖に、一部の市民のアイデンティティは、カナガワ県との境にいる『マチダ』を好んでいるように思う。町並みも、俺には死ぬまで関係しないようなファッションブランドが鮨詰めになった、なんだあれ、デパートっていうのか。そう言うオシャレなものが乱立しているが、その足元には小汚い居酒屋が、死骸に群がる蟻の様。その昔、マチダの『マルキュー』の頭には、冠のように公民館が乗っかっていた。まさにマチダを象徴するような建物だったと思う。ついで、そんな賑やかな町の、JRを挟んだ向こうにはラブホ街。通り過ぎる人々も、服装や雰囲気が多種多様。酔っぱらったクソジジイも馬鹿な学生も、なんでもいる。そこが好きだ。


 そんな俺のお気に入りは、駅前に三つある日高屋の『どれか』だ。少し歩いた距離同士にあり、なんで同じ店が、こんなに密になっているのかよくわからない。


 夜十時。どんなに分厚いコートを着ていても、寒さが貫通する中、そそくさとそのうち一つに、俺は入った。


『ダブル餃子定食、唐揚げ』


 少しまで店員にメニューを口頭で伝えるのが常だったのだが、最近になって全てタッチパネルが担っている。別に感想はない。時代だ。セルフと言えばガソリンスタンドだと思うが、スーパーマーケットでも、セルフレジが増えた。これらに置いていかれる世代もいるというが、俺はそうではない。そうではなくて、よかったと、心底思う。思った。そういうことが最近増えた。


 映画『シン・ヱヴァンゲリヲン』

 映画『ゴジラ-1.0』


 そして、劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』


 俺は三つの日高屋に通いつめ、空いている時間を把握している。その中でも、奥まった、人目につかない席を知っている。俺は、少しだけ厭な顔をする店員を後目に、空いていることを質にして、そこに座る。


 俺は、教師だ。マチダから遠く、一時間ほど離れた高校の教師だ。マチダにはずっと住んでいる。大学がこの近くで、それ以来、ずっとだ。


「ダブル餃子定食、唐揚げです」


 店員が料理を持ってくる。俺は黙ってそれを受け取り、店員が伝票を卓上の筒に差し込むのを横目にそれらをかっ食らう。大学生のころからやっている仕草だ。もはや作業と言ってもいい。あっという間に空になった皿を卓の奥に押しやり、一息。そして、作業に取り掛かる。


 俺は、教師だ。担当は英語。別に英語が好きという訳ではないし、関心があるわけでもない。ただ、昔からこれが一番成績が良かったから不満はない。その、小テストを鞄から取り出した。俺はいつも、ここで採点をしている。


「それ、よくないと思うなあ、先生」


 赤ペンを取り出し、生徒の汚い字を目でなぞる。よくもまあ、こんなふざけた字でふざけた解答ができる。いつもそう思う。意味不明な文法、誤った綴り。時々、俺が間違っているんじゃないか、そう思うこともある。なぜこんなに堂々と間違えることができる。なぜ疑問を持たない。恥ずかしくないのか。


「ねえ、聞いてる? クチナシ先生」


 高三だぞ、いつまでこんな、簡単な単語の綴りの間違いを続けるつもりなんだ。いい加減正せ。直せ。気づけ、修正しろ。俺の赤ペンは自腹なんだ。


「おい、不良教師」


 赤ペンを振るう俺の手に、もう一本、別の手が乗る。否、腕全体に絡んだ。


「ひぎぃ!」


 俺は思わず悲鳴を上げ、右腕に絡む何かを見た。それは、驚きでまん丸に見開かれた目をしていて、遅れて汚い茶髪がだらりと垂れる。校則ぎりぎりのリップや、崩れかけている化粧。得てして、まさに絵に描いたようなアソんでいる十六七の少女が、がっつりと俺の腕に抱き着いている。しかして、防寒目的か、MA-1を着込んでいるあたりに妙なギャップがあった。


「なに、先生、気付いてなかったの?」


「だ、だれ……」


 誰だ、その言葉を俺は飲み込む。見覚えがある。


「ゼンマイ・ツクシか」


「絶対忘れてたっしょ」


 責めるような視線ではない。どちらかというと、馬鹿にしている。ゼンマイ・ツクシは昨年度授業を担当していたクラスの女子生徒だ。俺の学校は、生徒の服装などにまあまあ寛大なため、お目こぼしを貰っているが、当然先生の中には彼女を目の敵にしているものも少なくない。そう言った会話の中でよく出てくる生徒であった。


「少しな。それより離れろ」


 俺は腕を揺すった。今の時代、どこで何がどうなってハラスメントだなんだと取り沙汰されるかわからない。こういうチャラチャラした生徒が何を考えているのか、俺にはわからない。揺すってみたが、彼女の反応も予想がつかず、どうなるものかと思ったが、案外素直にゼンマイは俺の腕から離れた。代わりに、こともあろうにおれの正面に座った。


「ねえねえ、先生、一つ聞いていい?」その瞳は好奇心に溢れている。


「なんだ」俺は教師だ。訊ねられるのが仕事だから、答えるのも間髪は入れない。


「劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の話しようよ」


 ――。


 俺は解答に窮し、しばし硬直した。


「なんでだ」


 そして、訊ねた。


「先生が映画館から出てくるの見たんだよね。ねね、先生はどう思った?」ゼンマイは前のめりになって言う。俺は無意識のうちに小テスト群をかき集め、ファイルに戻す。


「お前は観たのか」目線を合わせずらい。手元とゼンマイを交互に見る。否、目が泳いでいたと白状しよう。


「うん」


 即答だった。不思議なものである。


『ガンダムSEED観た?』そんな会話、こうやって、親しくもない人間に向かってでかい声で行うことなどありえていいのだろうか。


「なんでそんなことを聞く」


「なんで渋んの?」


 不満と嘲笑の入り混じった声。


「そもそも、お前、こんな時間までなにやってんだ」


 夜は十時を過ぎている。こんな時間に女子生徒がうろついていいわけがない。


「いいじゃん。そういうこともあるって」


「今日は駄目だ。早く帰れ」


「先生、いつもここで採点してるよね。みんな少し引いてるよ」


「はあ?」声が上ずる。


「なんでそれを知ってる」顔面が熱くなるのを感じる。


「わたし、ここでバイトしてる」


「おい、校則違反だろ」


 ゼンマイの言葉を即返す。それが、例え問答の筋を外れていても。


「いいじゃん。別に」


「よくな……」


「学校に言うよ、先生がここで採点してるって」


「校則違反の方が重い」俺はゼンマイの目を見て言う。


 それに、別にどこで採点をしたっていいし、ここはあまり人も立ち寄らないから個人情報がどうの、なんて話にはならない。言い分はある。それよりも、校則違反であるアルバイトや、夜中の十時まで出歩いている方が問題だ。それに、こいつは普段から……


「でも、わたしはせいぜい停学だけ。先生は違くない?」


 急に知ったような口を利く。でも、お前の方が罪は重い。俺がどこで採点をしようと自由だ。脂っこい床と薄汚れた壁に囲まれた日高屋の一角でそれをしようといいじゃないか、そんなことを、しかし、俺は口にせず奥歯を噛んだ。いくら言い争っても、これには果てがない。


「違くない。もしもそうだったとして、この問答に果てなんてない」


「そうそう。つまり、ナチュラルとコーディネイター」


「違う!」俺は声を荒げた。そして、教師として、大人として反省する。そして、目の前の校則違反すれすれの少女にしては、妙にクレバーな返答が来たことを思い出す。否、正しいのか? その例え話。俺は一瞬思案した。その隙を突き、少女はつづける。


「ねえね、劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の話しよ。わたしも同じ時間に観てたんだ。凄くない?」


 マチダには大体なんでもあると俺は思っているが、ただ一つ、映画館がない。この場合、どこに行くかというのが意外に分かれ目だと俺は思っている。俺は大学の都合、小田急線に馴染みが深く、なんとなくシンユリガオカまで行ってしまう。こいつも同じだったというのか。


「友達がいるだろう。そいつらに話せ」


「え、無理」


 ゼンマイは即答した。


「なんでだ」


「なんでって……」


 そう訊ねた後、俺は後悔した。一瞬、彼女の顔に影が差したと認めてしまったからだ。もう数十年前に遡る。『ガンダムSEED観た?』なんて会話をする場所なんて、教室の隅か、学校の帰り道ぐらいだったのを思い出した。話す人間も限られる。


 ――こいつも、同じなのか?


 俺とは似ても似つかない派手な見た目のゼンマイ・ツクシの顔を、俺は凝視した。それに気づいたのか、ゼンマイはぱっと顔を上げた。


「それよりさ、凄かったじゃん」


「どれがだ」


「うーん、なんか、全部」


 どうしようか、これで適当に会話を断ち切ってもいい。しかし、ゼンマイの方が早かった。


「逆シャアとVガンダムとF91がごっちゃになってた。あ、ダブルゼータも入れていい?」


「そうきたか」


 その時、俺は内心、ある種、不思議な歓喜に満たされていた。こいつ、できる。


「インパルスガンダムSpecⅡのソードシルエットが真っ赤だったの、ビギナ・ギナじゃんね。ベラ・ロナ・スペシャル」


「お前もそう思うのか」


 そう言って、俺は後悔した。だが、一方でもう少しだけ前に進みたい、そう思ってしまった。


「ブラックナイトスコードのデザインとか、もろにそっち系だよね」


「木星感があるよな」


「もともと、シードとデスティニーがファーストとゼータを追っかけてたから、当然だとは思うけどね」


 得意げに、否、それくらい常識という顔で目の前の少女は言う。俺は目を白黒させた。


「待て、お前、全部観てるのか?」


 一つ、はっきりさせねばなるまい。


「うん、お兄ちゃん二人がオタクだから」


 にしても凄い、俺は正直、感激すらしていた。長く連絡を取ってはいないが、古い友人たちだって、ここまで胸を張って、全部見た、と頷ける者はいないだろう。


「でも、お兄ちゃんはもうガンダム卒業しちゃったし」


 痛いことを言ってくれる。当てつけかと思った。なんとなく盛り上がった俺の気が下がる。その様子を知ってか知らずか、ゼンマイは再びガンダムの話題を口にした。


「要素としては、クエスっぽい感じのキャラとかいたじゃん? 逆シャアかなって思ってたんだけど、やってることはギロチンっぽいし」


「そうだな。今までのシードにはいなかったあからさまな女王と、女王がヒロインを求める様といい、丁寧にVガンダム要素を拾っていたな。宇宙世紀をなぞる、というか擦るというか、そういうところはむやみやたらにちゃんと『SEED』だったな」


「過去作のセリフをじゃんじゃん使ってくれるのもファンサっぽくていいよね」


 モビルスーツの性能がー、とゼンマイは笑った。


「お前歳いくつだよ」


「十七」


 少女は目の前でニヤニヤしている。俺はどうしたものか判断がつかない。


「内容にしても、レクイエムも核もバンバン使って、そういうのもなんかSEEDだなって思わなかった?」


「もともと倫理観終わってるシリーズだからな。報復に核とか、普通はあり得ないが、あの世界だと、まあ、あるか、ぐらいになっちまうからな。胡散臭い取引とか、滅茶苦茶な作戦とか」


「あの辺の作戦、大分オカルト入っててちょっと引くよね」


「SEEDはあんまりそういうのがないガンダムだったからな。急に劇場版になってから大きく洗脳したり、女口説くのにも使えるようになって……世界観が崩れるというか」


「あれは、デスティニープランに対してラクスとキラが明確な否定を突き付けるために必要なことだからよくない?」


「急にヒートアップするなよ」


「だってさ、よくない? デスティニーの時はちょっとうやむや感もあったけど、やっとみんなデスティニープランに結論がついた感じとか」


「むしろキラがいまだにずっと引きずってたのがちょっと面白かったけどな」


「最低。キラは平和な世界をラクスに……」


「わかってる。ただ、デュランダルが思ったりよりも爪痕残してたのが面白かっただけだ。全体的に、シン周りの話も含め、『機動戦士ガンダムSEED Destiny』に決着がついた感じは、当時追いかけていた身としては少し安心した」


「わかるー! シンもそうだし、それからディアッカとかイザークも、それからミリアリアとかあの辺も、一瞬映るだけでなんか救われた感ある!」


「そうだな。あいつらどうなったんだ、にも大体答えを出してくれてたし、キラとラクスがデスティニープランに結論を出すあたりも含め、大きな『機動戦士ガンダムSEED Destiny』のエピローグって要素もあった。実際、不満のあった人も軒並み安心してるんじゃないか?」


「ね。それにそれに、ちゃんとアスランにも出番あって超よかった! シンが救われるのはまあ、当たり前じゃん? デスティニーガンダムだって扱いあれだったし。でも、なんか引くぐらい活躍しててよかった!」


 彼女は無邪気にそういう。


「それに、アスランがちゃんとキラと喋ったり、喧嘩したり、マジ最高じゃん?」


「そうだな。アスランがちゃんとキラの親友やってるシーンって、意外に少ない気がするからな。っていうか、アスランがシャアポジションを担うこともある、っていう要素を思い出させてくれるシーンもあって面白かった。ズゴックに乗って登場するシーンのBGM、あそこだけちょっと古臭くて」


「そうだっけ? まあいいや。それとストライクフリーダムにアスランが乗るのも超熱い! 熱くない?」


「近接バカみたいな印象があったけど、今回ので器用な面も押し出されて、ますます強い印象がついたな。やっぱり一番強いのはアスランなんじゃ、って」


「それな! しかも、サプライズもいっぱいあったし、超満足! 先生の家にさ、ズゴック余ってない?」


「ねえよ。でも、二十年以上組み立ててないミーティアがあるぞ」


 ガンプラ作るのかよ、という言葉を飲み込む。


「それはいらんわ。バスターもデュエルも今、マジでどこで売ってんの? メルカリ?」


「あっても当時のHGは満足な出来にするの大変だぞ」


「全然オッケー。塗るの得意だし」


 意外だ、とは思ったが、Twitterで、ガンプラも化粧も同じ、という言説を見た覚えがある。案外、女性の方がうまくやるものなのかもしれない。


「なら、メルカリに張り付くしかないな。あったらがんばれよ。ミーティア」


「いや、作らんし、ミーティア。置き場ない。先生が作ればいいじゃん」


「まあ、機会があったらな」


「もったいないから作ればいいのに」


「まだ、名前もわかってないアカツキにも使えるよくわからない装備とかもあるし、少し待つつもりだ」


「まじあれなんなん。強すぎでしょ」


「知るか。でも、この先の楽しみができてよかったんじゃないか」


「それな。新しいもんがいっぱいあったし、続編待った甲斐があったわ。先生もそう思うでしょ」


 目の前の少女は満足そうに言う。俺は、その様子を見、静かに水を飲んだ。


「よかったよね、 劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』 」


「まあ、な」


 ここは、大人になって、全力で彼女に同意してやるのが正しい。そう思っていた。だが、俺は思ったよりも正直で、何よりも事故を出すことに躊躇いがなかった。おかげで、この頭空っぽそうな女子生徒、ゼンマイ・ツクシすらも異変に、否、テンションの違いに気づいてしまう。


「……なんかあったん?」遅れて、ゼンマイは不安そうな表情を浮かべた。漸く、俺とのテンションの違いに気付いたらしい。


「お前は……」


 そして、ここに来て俺に躊躇いが生まれる。こうなるぐらいならちゃんと、少し臭くてもいいから、彼女に全面的に同意しておけばよかったのだ。だが、不思議そうにこちらを見つめる、妙に澄んだ瞳に、嘘はつけないと思った。


「お前が見たのは、 『機動戦士ガンダムSEED Destiny HDリマスター』とかか?」


「え? それは……」


「リアタイじゃないだろ」


 相手は子供だ。そう思っているのに。言葉が止まらなくなった。


「リアタイと、HDリマスターは別物なんだ。別物なんだよ、HDリマスターとリアタイは。わかってない、それをわかっていないんだ、お前達は。それなのにデスティニーのことをぺらぺらぺらぺらと知った風な口をきいて」


「先生、日本語下手になってね?」


「インパルスガンダムの戦闘シーンがエールストライクガンダムだったりさ。作画崩壊自体は、まあ、もう仕方ないと思う。だけど、違うモビルスーツを、ばれないだろ、みたいな精神でこっそり差し替えて乗り切ろうとするのは違うだろ。それに、そもそも、途中からタイトルでストライクフリーダムがポーズ決めるのもさ、違くないか。シンがまるで、主役じゃないみたいじゃないか」


「先生?」


「あれから、二十年近くたった。俺も大人になった。色んなことに、仕方ないさ、と言えるようになったし、アニメにしがみつくような歳じゃない。時代が変わったこともわかる。だから、ある時からは『機動戦士ガンダムSEED Destiny』のことは『つまらない』物語だと思っていた。カガリの言動や、キラの扱い、あと、生きてたムウとか。滅茶苦茶なことが多すぎる。多すぎた。そういうところが駄目なんだって。だから、おれは『機動戦士ガンダムSEED Destiny』のことが気に入らない、気に入っていないんだって」


 あと、金ぴか関節のストライクフリーダムも俺は認めていないぞ、とつい付け足す。


「デスティニーガンダムの拍子抜け感を埋めるような活躍があった 劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』 に安堵する気持ちもあるし、あの戦争だらけのコズミック・イラで、完全な『終結』は無理でも、キラとラクスの物語に蹴りをつける、そういう落としどころにしたのも否定はしない。寧ろ良かった。観てよかったと素直に思う」


 俺は、そういいながら、荷物をまとめる。ただ、茫然と俺の動作をゼンマイが目で追っているのが気配で分かる。


「だが、だからこそ、一方で、わかってしまったんだ。俺は、ずっと、『機動戦士ガンダムSEED』シリーズのことが嫌いだったんじゃない。あの時、客を馬鹿にするような中途半端なバンクシーンや、前作のシーンを多用して誤魔化すとか、そういうやつらの仕事に対する姿勢が許せなかったんだ」


「先生……」


「 劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』 で満足したからこそ、わかってしまったんだ。『おれ』はあの時、『機動戦士ガンダムSEED Destiny』に何を抱いていたのか。主人公すらタイトルロゴから塗り潰す、まるでなかったかのようにする、彼らの姿勢に納得いかなかったんだ。そして、それは、どんなに素晴らしい続編が現れても消えることはない。やったことは、消えやしないんだ。何度花を植えようと、育たない土地だってある。核で汚染されたり、とかな」


 ゼンマイ・ツクシが絶句している。俺は鼻でその様子を笑う。さぞ、醜い大人に見えるだろう。


「俺のコズミック・イラは終わらない。そういうことだ」


 俺はさっさと立ち上がり、伝票を引き抜く。


「お前とは、もしかしたら仲良くできたのかもしれない。でも、簡単じゃない。それを、俺は今、心底よかったと思っている」


 教師と生徒なので。


「でも、先生!」


 背後で、ゼンマイ・ツクシが立ち上がったのが音で分かる。


「わたしは、信じています。先生が、いつかちゃんと、『SEED』のことを、心の底から許せる日が来るって!」


「ああ。来るといいな」


「だからわたし、次は、アストレイシリーズのちゃんとした映像化の時まで待ってます!」


「クロスボーンが先だろ! 戦争するぞ」


※ただの架空のお話です。架空の登場人物が、 劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』 の感想を喋るだけです。

 ちなみに、著者は劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を死ぬほど楽しみました。折見て二回目も行くと思います。

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【ネタバレ有り】劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の感想と亡霊の話です。 杉林重工 @tomato_fiber

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