夫婦箸

第1話 夫婦箸 (一話完結)

永い主人との結婚生活で、三年半、家庭内別居していた事が有る。

必要な事も喋らないのだから、只の同居人より離れていた。

勿論、ご飯も別々。ある日、夕飯を食べようと箸を探したがない。

割り箸でさえも見つからず。仕方なく主人に訊いた。

「箸知らない!?」「あるよ。」彼は引き出しから

夫婦箸の未使用を取り出し私に手渡した。赤いものだ。

良く見ると主人は黒。何だ、お揃いかと思ったが、

何故わざわざ夫婦箸にしたのだろうと疑問を持った。

「ありがとう。」それが現在に至る夫婦の姿の始まりだった。

段々喋る様になり、一緒にご飯を食べる様になり、

家庭内別居が嘘の様に、私達は打ち解けていった。

愛らしい赤い箸に感謝した。本当に嬉しかった。

今では、とても仲良く、箸もボロボロになり、

一緒に新しい夫婦箸を買いに行こうかと思案中となった。

幸せだと感じる日々・・・である。