第30話 犯人見つかったらしい
しばらく食休みに雑談をして食堂出た私達はギルドへ戻っていた。
仕事中にシロを連れ出したことをサーヤさんに怒られたけど、おっちゃんがサーヤさんは大人っぽくて好みだと言ってたことを伝えると早めに説教が切り上げられたので得したよ。
「本当にありがとうございました、久しぶりに美味しいごはんが食べれてよかったです」
「ありがと。それと、ヨナ……僕と、同じもの食べる。僕を食べない」
「わかってくれてよかったよ、ヨナと友だちになれる?」
「うん、ヨナ……友達。怖がって、ごめんね」
「あ、ああありがとうございますシロさん!」
同じ食生活をする仲間としてヨナも認められたようで、二人は笑顔で握手をしていた。長い間両方不安そうだったけど友達になれてよかった、本当に苦労したかいがあった。
これから虫を取る時はヨナも連れて行こう。私より上手いはずだし、でも食べる時は一緒か……いや、やっぱりもう無理だな。ちゃんと調理されてるはずなのにお腹の中で蠢いてる気がして落ち着かないよ。
「それで今日はどうします? 昨日は私もずっとギルドにいたので依頼を受けてないんですけど」
「そうだね、もうお昼過ぎてるし簡単な依頼でも探すか」
自由に受けられる依頼が貼り付けてある掲示板まで行くと、黒いローブにマスクで顔を隠した冒険者が近づいてきた。
確かシーカー……Bランクの索敵職の人だな。パーティに所属していないフリーで、腕がいいからよくいろんな依頼に同行してる。
「あー、その……ギルバートさんから連れてこいって言われてる。ちょっと来てくれ」
「私に? なんだろ」
入った頃しばらくからかい目的で話しかけられたことはあったけど、普通に用があるなんて初めてだな。もう長いと言えば長い方なのにギルメンとまともに喋ったのはいつぶりだろう。
「ギルド長の部屋だ、俺も行かなきゃいけないし来てくれ」
「わかった……シーカーだよね? Bランクの」
「俺のことを知ってるのか……?」
「索敵職で腕のいい奴だってギルオジが言ってた。パーティ入ってればAランクにもなれるのにってよく聞かされたよ」
「そうか……なんか、少し嬉しいな。ギルバートさんが目立たない索敵職の俺を評価してくれてるなんて」
そりゃギルド長だもの。
ギルメンのことは全部知ってるはず、名前も顔も引退した人含めて全部覚えてるって酔うとよく話すんだ。
ギルオジの部屋の前に立ってシーカーがノック、私を連れてきたことを告げると扉が開かれた。中にはギルオジと、レイラ含めたSランクパーティの面々が座っている。
「レイラまでいるの?」
「やあラヴァ、私は今回任務を受けた身だ。仕事ならいるのは当然だろう?」
任務? 私は受けてないしランクからしてもSランクに呼ばれるようなものじゃない。なんで呼ばれたのかまだわからないな。
たぶん封鎖地帯に忍び込んだ件ではないだろうし。
「集まったな、お前らも座れ」
「失礼しますっ!」
「ここでいい? いつもの場所埋まってるんだよね」
促されて席に座る。
ギルオジは最奥の椅子に、私とシーカーが右側のソファ、対面する左側にレイラとそのパーティが三人。
とりあえずいつも通りな感じで待っていると、ギルオジが切り出した。
「竜骨のある採取地で魔物を放った奴がわかった」
「早いな、調査開始からまだ日も経ってないだろうに」
「シーカーの功績だ、現場の足跡から調査して多くの証拠を集めてくれた。よくやったな」
「ありがとうございます……!」
Sランクパーティの前で元SSランクのギルド長に褒められるなんて嬉しいことだろうに、幸せ噛み締めてるよ。よかったねぇ。
「あと、封鎖地帯で虫の巣をつついたどっかのバカのおかげでもある」
そう言うギルオジの目は一瞬だけ私を見た。もうバレてるのかよ。シーカーめ、無駄な証拠見つけやがって。
「そのバカの話は置いておくとして、上がった犯人だったのが少々厄介なやつでな。今回対策任務をするにあたりお前たちに集まったもらったわけだ」
「ごめんなんで私いるの?」
「それもこれから説明する、黙って聞いておけ」
ギルオジが立ち上がり、壁のボードを刺して説明を始めた。
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