第28話 圧がすごいよ
翌日、ギルドでサーヤさんと並んで立っていたシロを連れ出して街へ。受付嬢の制服は全身が隠れて肌が出ないのでシロの綺麗な白髪だけが風に靡いて目立っていたから、道中少し見られたけど気にせず食堂までの道を三人で歩いた。
「ど、どこいくのぉ……?」
「ラヴァさん、こっちはあのお店ですよね? ご飯ならそう言ってくれれば」
「飯は飯だけど、今日は少し違うから!」
混血の竜人が二人と、アラクネに見えないとはいえなにかしらの亜人であろう白髪の少女が歩いているのは珍しいけど、そんなの気にしないほどに私は楽しみなのだ。
なんたって友達にサプライズやプレゼントをするなど初めてだから。そもそも人になにかを無償であげるなど小さい頃母さんに花冠を作った以来あっただろうか?
「着いたよ! おっちゃん準備できてるー?」
「よお、まあ座れ」
中に入るといつもはちらほら数人いるお客さんもいない。特殊な料理を出すこともあって気を効かせてくれたようだ。
「いつも一人で飯食ってた奴が友達なんて連れてきたんだ。今日は俺の奢りだぜ」
「ありがと、ほらヨナもシロも座って」
「はい……どうしたんですか急に?」
「まあまあ。シロ、この人優しいから安心してね」
「うん……」
すっといつも通り手を差し出すシロに、おっちゃんは考えることなく握り返した。
シロからすればこれができれば友達判定、出てくるものも警戒せず食べるだろう。
「よろしくな!」
「友達……」
「そういや竜人の嬢ちゃんも、このバカが世話になってるみたいだし」
「あ、いえ……私もお世話になってます」
誰に対しても寛大なおっちゃんらしく、シロと握手すればヨナとも握手をする。
席につくと位置は私と対面するようにヨナが、隣にはシロ。二人並んで欲しかったけど流石にまだ早いようで、自然とシロは私の隣に座った。
「楽しそうですねラヴァさん」
「んー? 友達とご飯食べるのは楽しいよ」
「僕も、嬉しい……」
ぎゅっとシロが腕にしがみついてくる。
恋人みたいな動作だけど、シロなりのスキンシップだろうからあんまり気にしなくていいよね。
「シロさんずるいです、隣だからって」
「ラヴァ、僕の……」
「ちょっと、私は誰のものでも――」
「私も隣がいいです!」
と、ヨナが、椅子を動かして隣まで着てしまった。これじゃ机の形的に料理を置く位置がなくなってしまうんじゃないか?
でも小分けに持ってきてもらえればいいか、と思ってたけどヨナもやけに距離が近い。
「ヨナ、両手動かせなくなっちゃうよ」
「食べる時は離しますから」
「シロもね?」
「僕はこのままでいい、ラヴァには、僕が食べさせる」
食べさせるといってもシロハ私の腕に両手でしがみついているわけだから、どうやるつもりなのか。
「僕が噛んでラヴァの口にいれる」
「私は赤ちゃんじゃないぞ!?」
「シ、シロさんそんな……! さすがに私は恥ずかしくて」
「ヨナも対抗しなくていいよ!? てか自分で食べられるから!」
「青いねぇあんたら、ほら残さず食えよ」
ドンと机の真ん中に置かれた大皿。
乗っているのは串焼きのブラックバグとサラダで、私は正直見るだけで食欲が失せた。でもシロとヨナはそれを見て目をキラキラとさせている。
喜んでくれたのはなによりだよ。
「もしかしてこれ、私達に?」
「ラヴァ、いつ獲ったの?」
「昨日ね……一応私も食べるけど、もしかしたら――」
チラッとおっちゃんを見ると、視線だけで食えと命じられた。その目つきは竜人の私が身震いするほど鋭い。
「私も食べるから楽しんでね……!」
「まさか人の街で食べられるなんて」
「ラヴァと同じご飯、嬉しい。ありがとう」
「は、はは……苦労したかいがあったよ。はぁ……」
早速手に取った串焼き、すでにヨナとシロは私が食べるのを待っている状態。おそらく私が食べから食べるつもりだろう、二人のためにも早く口に入れないと……。
黒い目玉と目が合い、若干引きながらも三人の圧に負けてブラックバグの串焼きを口へ運んだ。
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