第27話 刺されりゃ痛い
グリーンビーの巣を探すために闇に紛れて潜入開始。見張りをやってるのはギルドの冒険者か、じゃあ警備ザルじゃん。
ラッキーだと思ってさっさと入っちゃお。
中は特に変わりなし、夜中だから調査も切り上げてて誰もいない。暗くても私は人より見えるから問題ないね、さっさとグリーンビー探して捕まえちゃお。
「確か高い木に巣を作ってるんだっけ?」
木に登って確認してみるけど、グリーンビーは名前の通り暗い緑色の虫型魔物だしさすがに見えない。巣も葉っぱとかに隠れるからなかなか難しいな。
とりあえず枝から枝へ、飛び移りつつ探してみると甘い匂いがしたのでそちら側へ、遠くからじゃ見えなかったけど近づくとグリーンビーの巣があった。
甘い匂いは巣に溜まった蜜かな……うーん蜜だけ使うデザードならぜひ食べたいところなんだけど、本体使うのは免れないか。
「そもそも巣ごと持って帰るとか無理だし、なんとか三匹は捕まえたいな」
木を降りてそっと近づき、気づかれていないことを確認してからゆっくりと巣に近づいて覗き込む。
襲われないようにそっと巣に手を入れて羽を掴めば音も出さない、これで一匹ゲットと思ったところで肩から下げていた虫かごの中で暴れ出した。
「やばっ……もういいやおりゃー!」
どうせ逃げるなら必要数確保してと思い手を突っ込んで取れるだけ取って虫かごに収納。めちゃくちゃ追いかけてきたグリーンビーの群れから全速力で逃げる。
「ひいー! 刺すなら鱗があるところにしてぇー!」
願い叶わず胸元をブスリと刺された。
覚悟してたから叫ばなかったけどなんだかんだ結構痛いわけで、竜人だって虫に刺されれば腫れる。
虫刺されの薬あったかな……なかったらまたアドの工房行こ。
「とりあえず全員ゲット……早めに持ってこいって言ってたしおっちゃんのとこ行かなきゃ」
夜まで待ったから街に帰る頃には深夜になっちゃうな。おっちゃん起きてなかったらどうしよ、持って帰れないし食堂があくまで待たなきゃいけないかも。
なんとか胸元のかゆみに耐えつつ食堂へ、当たり前だけど閉まっていたので裏口をノックしてみるといつもの服ではなく寝るようにラフな格好をしているおっちゃんが出てきた。
「お前……もう夜中だぞ」
「これ取ってきたから、お願いね」
「いやマジで夜中だぞ、こんな時間まで虫取りしてたのかよ」
「せっかく教えてくれたから早く使ってほしくて」
「はぁ、わーったよ。明日亜人の友達連れてこい、食わせてやっから」
「ありがと!」
「でも残したらただじゃおかねえぞ」
「はいぃ……」
なんとか渡すことができたのでその足で宿屋へ。
魔術師の中には転移魔法が使える人もいると考えると羨ましくなる、あっちこっち走り回ってやっと目的を達成したのに帰るのにもまた歩くなんてね。
でもアドとかに言ったら怒られそう、そんな簡単なものじゃないんだぞってさ。
そんなくだらないことを考えながら街を歩き宿屋の自室へ。鍵は開いていて入るとまだヨナが起きていた。
「ただいまー、まだ起きてたの?」
「たぶん晩ごはん食べてないと思いまして」
そういえば確かに、私まだなにも食べてなかったや。虫ばかり見る一日だったから食欲もあまりわかなかった。
「パン温めますね」
「そういえばシロとはどうだった?」
「目を見てはくれないですけど少しだけ話せました。サーヤさんが私は怖くないと教えてくれてるみたいで」
「ならよかった……はあ、一日歩いて疲れた。ご飯食べたら寝るぅ」
「お疲れ様です、なにをしてたかは知らないですけど大変だったんですね」
「まあちょっと痛い思いする程度には?」
グリーンビーに刺されたところがまだムズムズする。針は抜けてるから治っていくけど薬ないとあと数日は気になるぐらいかな。
「怪我したんですか!?」
「怪我ってほどでもないよ、心配しないで」
ぐいっと顔を寄せてきたヨナから少し離れた。心配してくれるのは嬉しいけど虫採りしてたことバレたら台無しだから。
「危ないことしないでくださいね、特に封鎖されてる竜骨の場所とか言っちゃダメですよ」
「わかったよぅ……」
ごめん、もう行った。
でも誰にも見られてないから実質行ってないってことでいいよね。
―――――――――――
やっと更新できました。
リアルが忙しくなってしまってな……しばらくゆっくり更新していきます。
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