第24話 取り扱い注意

 魔法街を抜けてアドのいる工房へ。

 魔術師なら触媒になる虫の生息場所とか生態にも詳しいよね。必要な四種類の虫を捕まえるために教えてもらおう。


「アドー?」


 工房内から足音が聞こえるし、中にはいるんだろうと思ってノック。しばらく待つと出てきたのは青髪の魔術師ではなく青みがかった金髪の女性、服装から見るに魔術師っぽい。


「あれ、アドは?」


「アドさんなら今空けてますけど……ご要件があるなら私が聞きます」


「えっと……てか誰? ここアドの工房だよね?」


「助手のテレサと言います。あなたはアドさんとどういう関係で?」


「依頼者と冒険者かな? まあ一晩以上一緒にいたから友達みたないもんだよ」


 アドはどう思ってるか知らないけど、私の感覚ではそんな感じ。なんだかんだ話してて仲良くなった気もするからね、見た目違うとはいえ同じ竜人だし。


「一晩!? あ、あああなたアドさんと一体何を……!」


「なにって、別になにもしてないよ。長期の採取任務だから同じテントで寝ただけ」


「ど、同衾!? そんな、私はいつも日が落ちたら帰らされるのに……もしかしてアドさんは亜人フェチ……!?」


 なんかいろいろ勘違いしてそうなんだけど、訂正するのもめんどくさいから放っておこう。なにかあってもアドがどうにかしてくれるだろ。


 それよりも今は虫の生息場所を聞かないとね。アドが来るまで待つか。


「ねえテレサ、アドが来るまで待ってていい?」


「竜人となんてそんなぁ……アドさん、私は人間だからダメなの……?」


「テーレーサーちゃーん?」


「はいぃ! あ、すいません……それでご要件はなんでしたっけ?」


「アドに聞きたいことがあるから待ってていい?」


「それならどうぞ、お茶ぐらいなら出しますので」


 珍しいことだけど魔術師の工房に入れてもらえた。

 中をちゃんと見るのは初めてだな、よくわからない実験器具がわんさかあるし、触るのが怖いくらいエグい植物とか生えてるよ。

 あ、花が虫に飛びついた。


「いろいろ危険ですからあまり動き回らないように――ってそれカミツキバナですよ!」


「なにそれ? うわっ危な!」


 虫を食べた花に近づいたら花弁が私の顔に噛みつこうとしてきた。よく見たら歯みたいなのが生えてるし、魔術師の工房すごいな。


「座っててください、魔術師じゃない人は危ないんですから!」


「ごめんごめん、珍しくてつい」


 テレサに引っ張られて座らされ、しばらくキョロキョロしながら待っているとティーカップを持って戻ってきた。

 いい香りのするお茶もある、お高いやつかな?


「どうぞ、ハーブティーです」


「……美味しい、これどんなお茶?」


「私が育てたハーブです。薬草学は得意なので、お茶として美味しくなるよう改造しまし」


「すごいね、魔法ってこんなこともできるんだ」


 あれ、でも魔法での現存する植物や動物の改良ってやってよかったんだっけ? なんか専門の人がやるやつだった気がする。


「売ったりしなければいいんですよ、これは個人利用なので大丈夫です」


「読心術……だと……!?」


「顔に書いてありますよ、わかりやすいですね」


 私そんなわかりやすい顔してたのか、気をつけよ。テレサはなんか真剣な顔してるし、何考えてるかわからないな。


「さて、改めてお聞きしますがアドさんとはどんな関係で?」


「だから依頼受けた冒険者だよ、今日来たのは別の用事だけど」


「その用事って?」


 なんか尋問受けてる気分になるな。同じ工房の人に会いに来ただけでそんなに気になるものなのか。

 まあ冒険者でいうと同じパーティの人に知らない人が訪ねてきた感じと考えるとそうなものか? 私も知らない人がヨナの友達だって言って来たら少し疑うかも。


「いくつか素材になる魔物の場所教えてほしくて」


「ギルドで聞けばいいんじゃないですか?」


「任務じゃなくて個人的な用事だから、アドは詳しいと思ってさ」


「そりゃアドさんほど優秀な魔術師ならこの辺の魔物の巣とか網羅してると思いますけど」


 なにこのアドへの絶対的な信用。

 この子弟子なのかな、アドがそういうのとるイメージないんだけど。自分の研究に一直線って感じだったし。


「とりあえずそれだけ聞いたら帰るからさ」


「わかりました……アドさんからの依頼ってなんだったんです?」


「ドラルビー採取の護衛だよ、三日の予定だったんだけどトラブルが起きて二日になった」


「それで同じテントに――いや、冒険者ってそういう時個人用テント使いますよね?」


「忘れてたんだよぉ、受けた時ギルドが騒がしくてちゃんと内容聞いてなかったから」


「ふ、二人きりですか……?」


「いや、もう一人ヨナって子が。私と同じ混血の竜人」


「まさかの竜人ハーレムッ!?」


「そんなことないよ! そもそもアドは……」


 おっと、この感じアドが竜人ってこと知らなそうだな。隠してる感じじゃなかったけど勝手に言っちゃ悪いか。


「アドさんがなんです……?」


「私の裸見ても冷静だったなって……」


「は、はははただはだだだだ!?」


 やばい、テレサちゃんがバグった。




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【あとがき】

ギリギリ間に合いました。明日は怪しい……

同時投稿中の『夫がダメなら眷属です〜結婚断ったら女神様の眷属にさせられたけど自由に生きていいらしい〜』を毎日投稿中ですので見て貰えると(ついでに☆や感想いただけると)嬉しいです。

https://kakuyomu.jp/works/16818023213078938346


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