第6章100話:魔族との戦闘

馬車のそばに立つ魔族。


紫色の体表を持ち、黒いツノが生えている。


顔はイカついオッサンである。


身長は189cmぐらいか。


服は野生的な感じの戦闘服。


筋骨隆々きんこつりゅうりゅうであり、服の上からでも筋肉の盛り上がりがわかるほどだ。


右腕には紅色の鉄棍棒てつこんぼうを持っている。


「魔族……」


この異世界にはいろいろな種族がいる。


そのなかでも、ツートップとされる二大にだい種族しゅぞくがいる。


一つはドラゴニュート。


一つは魔族だ。


魔族は魔力の扱いにけており、基礎きそ戦闘力せんとうりょくが高い。


そして厄介なことに、人類に敵対的てきたいてきな者が多い。


かつてクレアベルも、魔族は非常に強くて苦戦を強いられたと語っていた。


(しかも、めちゃくちゃ強そう……)


眼前にいる魔族は、まるで魔族まぞく集落しゅうらく族長ぞくちょうみたいな顔つきをしている。


あの鉄棍てっこんも、何かしらの加護や付与がある気がするなぁ、てきに。


やばいヤツと出くわしてしまった感がある。


「通りすがりの人間か」


と、魔族が低い声でつぶやいた。


私は尋ねる。


「……あなたは、ここで何をしていたのですか?」


愚問ぐもんだな。見ての通りだ」


「馬車を襲ったんですか?」


「ああ」


「なぜです?」


「趣味だ」


……おいおい。


馬車を襲ったのが趣味?


ただの悪党じゃないか。


「くくく、なんだその顔は? そんなに意外な話か? 魔族は人間のような下等生物を気まぐれに殺す。お前たち人間は、俺たちにとって、単なる狩りの対象でしかない」


ふむ。


なるほどね。


こいつがクズだということは、よくわかった。


関わりたくないな。


私は告げる。


「横を通してもらってもいいですか?」


そう尋ねると、魔族が笑った。


「がははは! 通してほしいだと? それを俺が了承すると思うのか?」


「ダメですか?」


「ああ……お前は殺す。まだ殺し足りないと思っていたところだからな!」


と、不敵な笑みを浮かべた魔族。


……しょうがない。


戦うしかないようだ。


魔族は強いらしいから、できれば交戦を避けたかったけど。


逃がしてくれそうにないしね。


「お前、武術の心得こころえがあるんだろう?」


と尋ねてくる魔族。


どうやら、私が剣術などをたしなんでいると、見ただけでわかったようだ。


「ええ、まあ。はい」


と私は答える。


「なら一応、名を名乗っておいてやる。俺はラザードだ」


自己紹介をしてくる魔族。


悪党のくせに武人としての礼儀はわきまえているのか。


ただ、私はあくに対して、礼儀正しくするつもりはない。


なので言った。


「どうも。私のほうは名乗りたくないので、名乗らなくてもいいですか?」


すると。


「ああ、構わんぞ。じゃあ――――」


と魔族―――ラザードは得物を構えて。


「いくぜ!!」


と、宣言してから地を蹴った。


地面を砕き散らすような初動で、私に接近してくるラザード。


鉄棍を振りかぶってくる。


速い!


私は慌てて後方に下がって、回避する。


「ほう。よく避けた。ただの雑魚ではないようだな!」


そう賞賛しながら、ラザードは追撃を繰り出してくる。


棍棒を一撃。


二撃。


三撃……と振り回してくる。


私はうまく攻撃を回避し続ける。





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