第6章99話:魔族

翌朝。


晴れ。


すがすがしい旅の朝である。


チョコレート・ハウス2階。


ベッドからのそのそと起き上がった私は、窓辺に立った。


実は、今回のチョコレート・ハウスは2階の窓をバルコニー形式にしており……


横開よこびらきの大窓おおまどを開けると、ベランダに出ることができる。


「んーっ!」


とベランダに出た私は、大きく伸びをする。


朝の陽射ひざし。


清新せいしんな空気。


雑木林ぞうきばやしと草原をなびかせる、そよかぜ


窓の外には、美しい自然の風景が広がっている。


深呼吸をすると、フレッシュなエネルギーが体内にめぐっていくかのようだ。






朝ごはんを食べる。


歯みがきなどを終えたら、外に出て……


チョコレート・ハウスを片付けた。


私は、街道を歩き始める。


歩く。


歩く。


歩く。


風になびく草原。


草原には樹木や、岩石が点在している。


晴れ渡る空は、青々と澄んでおり、どこまでものどかだ。


ああ、良い散歩日和さんぽびより旅日和たびびよりである。


「ふんふんふん~」


と、つい鼻歌をうたってしまう。


そんな感じで、のんびりと街道を歩いていく。





しかし。


昼過ぎ。


太陽が天頂てんちょうから少しかたむいた時刻。


私は、街道の先に、不審なものを見かけた。


「あれは……」


目を凝らして、前方を見つめる。


あ……


馬車だ。


しかも、倒れている!?


横転おうてんしているらしき馬車。


その馬車のそばに、人が一人立っている。


何人か、地面に倒れている者もいる。


「助けたほうがよさそうですね」


と、私は思った。


駆け足で、馬車のほうへと向かう。






だが、馬車の近くまで来て、気づいた。


馬車は転んでいた。


しかし、単に横転していたのではない。


破壊されていたのだ。


無残に破損した馬車。


積荷つみにや残骸が、地面に散乱している。


さらに。


地に倒れる4人の男女。


大人の男女が1人ずつ。


子どもの男女が1人ずつ。


おそらく家族連れだったのだろう。


そして。


その4人家族のそばに立っているのが……男。


人間ではない。


こいつは。


魔族である。

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