第5章91話:オムライス2

軽く味見あじみをしてみる。


(うん、美味しい!)


調理環境ちょうりかんきょうなどが発展していない異世界。


さすがに前世のオムライスにはおとる。


しかし、悪くない仕上しあがりだった。


私は3人ぶんのオムライスをテーブルに運んだ。


それから、寝室にいたアイリス、外にいたクレアベルを、それぞれ呼んでくる。


「できました。オムライスです」


クレアベルとアイリスがテーブルに座る。


まじまじと、オムライスを見つめた。


クレアベルは言った。


「すごいな……思ったよりも、ちゃんと料理になってる。初めてだし、失敗もあるかと思ったのに」


まあ、初めてじゃないからね。前世で散々さんざん料理はやったし。


アイリスも言う。


「良い匂い……もう食べていいの?」


「はい。どうぞ」


クレアベルとアイリスが、食前の祈りをする。


それから、食事を始めた。


木製のスプーンを手に取る。


私は言った。


「赤いソースと、卵と、ご飯を絡めて食べるのがオススメです」


「……こうか?」


クレアベルは、オムライスを崩して見せた。


私は、それでよし、という意味を込めて、サムズアップした。


クレアベルが、スプーンにのせたライスを口に運ぶ。


「……!?」


すぐに目を見開いた。


上気じょうきしたように顔を赤らめる。


「う、美味い……!?」


クレアベルが、たまらないといわんばかりに、オムライスをバクバクと高速で食べ始めた。


一方、アイリスも、スプーンを口に運ぶ。


「ほんとだ! 美味しいーー! なにこれ!?」


アイリスも顔を紅潮こうちょうさせて、勢いよくオムライスをほおばっていく。


クレアベルが言った。


「スプーンが止まらん。だが、悔しいな。私が作る料理より美味いじゃないか」


「お母さんの料理もおいしいですよ」


謙遜けんそんするな。コレにはどう考えても負けるだろう。というか、こんなレベルの料理、今まで食べたことがないぞ」


「さ、さすがにそれは大げさじゃないですか?」


と、私は言った。


しかしクレアベルは、真剣だった。


アイリスも同調する。


「お母さんの言ってることわかるよ。ほんとにコレ、美味しいもん。お姉ちゃんって、料理も得意なんだね!」


さすがにここまで絶賛されると、照れてしまう。


とにかく私も、食べることにしよう。


もぐもぐ。


うん。


美味しい。


ふっくら焼けた卵の甘味あまみ


パサつきのあるライス。


自家製じかせいトマトケチャップの甘味。


鶏肉やたまねぎも、しっかりと旨味うまみをかもしている。


トマトの匂い、卵の匂いが鼻を刺激して、幸せな気持ちにさせてくれる。


(あ~、やっぱりオムライスは美味しいなぁ)


と、思いながら、


私は、楽しい食事の時間を過ごした。

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