第4章82話:猛攻

疾駆しっくするジル。


それに呼吸を合わせるように、ニッシュも駆け出した。


「……!」


ニッシュが加速して斬りかかってくる。


上段から振り下ろす剣撃けんげきだ。


私は後ろに飛んで回避する。


しかし。


「……ッ」


私の背中にドレアスが迫る。


後ろに避けれない。


しょうがなく横に避けた。


加撃斬火かげきざんか】が炸裂する。


私の肩と脇腹に血飛沫ちしぶきが走った。


「ははは! 良いアシストです、師匠!」


攻撃が決まって、ニッシュが喜ぶ。


「ラァッ!!」


続いてジルが蹴りかかってきた。


私は横に跳んで避けた。


だが。


「良いところに飛んできたな、お嬢ちゃん」


「……!!」


跳んだ先にドレアスがいた。


ふたたび、たか鉤爪かぎづめのような手で、掌底しょうていを放ってくる。


その掌底には、腐敗の魔力が込められていた。


避けられるタイミングじゃなかったので、思いきり横腹に叩き込まれる。


「っっ!!」


私は吹っ飛ばされて大樹に激突した。


そこにジルがやってきて、私の髪を掴む。


「ひゃははははは! よえよええ!! 手も足も出てねえじゃねーかよ!!!」


ジルが私をぶん投げた。


その先にいるのはニッシュである。


ニッシュが気炎をあげる。


ざん――――ッ!!!」


二刀流の剣を流麗に振る。


直後に起こるのは複数の斬撃。


今回は、6つもの斬撃が同時に発生する。


「―――――――」


私は身体中を切り刻まれた。


浅い傷もあれば、深手ふかでもあった。


普通の肉体ならば敗北が決まっていたようなダメージだ。


「終わりか」


とニッシュが告げる。


呆気あっけなかったな。まあオレら3人が相手じゃ、こんなもんか」


とニッシュがつまらなそうに言った。


ドレアスが命じる。


「おいニッシュ。ちゃんとトドメを刺せ」


「了解、師匠」


ニッシュが剣を引き……


直後、突きを放ってくる。


その刺突しとつが私のみぞおちに突き刺さり、背中へと貫通する。


致命傷だ。


ニッシュが、私に突き刺した剣を引き抜く。


私は倒れた。


ジルが爆笑した。


「ひゃはははははは!!! どうしたセレナちゃんよォ!! もうくたばっちまったのか!!?」


ジルが近づいてくる。


そして私を蹴り始めた。


「雑魚のくせにイキってるからそういう目に遭うんだよォ!!」


ドカッ。


ガッ。


ドガッ。


ジルが倒れた私を蹴りつける。


「自分が死んだからって丸く収まると思うなよ? テメエの家族……アイリスとクレアベルだったか? あいつらも皆殺しにして、あの世へ送ってやるよ!!」


ジルが愉悦ゆえつの声で宣言する。


「テメエが俺様おれさま刃向はむかわなければ、こんなことにならなかったのになァ? 残念だったなぁ、クソセレナちゃんよォ!!」


ガッ!!


と頭を踏みつけるジル。


ジルが満足げに鼻を鳴らす。


私はぽつりと言った。


「あのー、死んでませんけど?」


「!!?」


ジルが驚愕きょうがくする。

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