第4章81話:対策

今のままでは、おそらくドレアスのほうが有利だろう。


私は頭の中で対策を考える。


(うーん……要は、腐敗と老化を止めればいいってことだよね)


チョコレート食品をあつかう企業に勤めていた私。


当然、鮮度を保ったり、防腐の技術については心得がある。


そして老化に関しては、アンチエイジングの知識が役に立つかな?


よし。


これらを念頭に、チョコレート魔法を強化しよう。


……そう思っていると。


「ふッ!!」


ドレアスが攻撃を開始してきた。


ドレアスが、たか鉤爪かぎづめのような手つきで、掌底しょうていを放ってくる。


私は慌てて避けようとした。


だが。


「!?」


足が動かない。


何をされたのか直感的に理解する。


(足を老化させられた!?)


朽ちた老人のような足になってしまったのだろう、私はロクに動けず、その場に立ちすくんだ。


ドレアスの掌底が、私の腹を打つ。


「くふッ!?」


私は吹っ飛ばされた。


大樹に激突する。


そこへ。


「ぬんッ!!」


みぞおちへ膝蹴りを叩き込んでくるドレアス。


衝撃が、私の背後にある大樹にも伝わり……


大樹ごと私は倒れる。


ドレアスが私の腕を掴んで起き上がらせ、蹴り飛ばす。


さらに4、5発の連撃を食らって、私は膝をついた。


むう……


なかなかダメージが入ってるぞ。


不死身なうえに痛覚すら遮断できるチョコレートだが、ドレアスの【腐敗】を食らった状態だと例外になるらしい。


(チョコレート魔法の効果を、半分ぐらい封殺されている感じかな)


苦戦というほどじゃない。


でも、あんまり油断しないほうがいいな。


さっさと【腐敗】への耐性を構築してしまおう。


私は頭をフル回転させ、自分の中にある知識をチョコレート魔法へと落とし込む。


腐敗に対しては防腐の知識を。


老化に対してはアンチエイジングの知識を。


あらんかぎりの知識を、己の魔法回路へと叩き込み、チョコレート魔法を再構築していく。


そのときだった。


「ひゃは――――――」


そのとき。


呵呵大笑かかたいしょうと笑いはじめる男がいた。


ジルだ。


「ひゃはは、ひゃははははははははは!! セレナが、一方的にボコられてやがる!!!」


ジルが歓喜の大笑をあげる。


「さすがドレアスさんだ! あのセレナを圧倒するなんて、天才だぜ!! そうだ……セレナだって無敵じゃねえ!! ちゃんと攻撃は通用するんだ!!」


「……あなたがすごいわけじゃないのに、喜びすぎじゃないですか?」


と私はツッコミを入れる。


しかし、私にダメージが入っていることが、よほど嬉しいらしい。


私のツッコミなんざ聞いておらず、ジルは笑い続けるばかりだ。


「師匠はやっぱりすげえな」


とニッシュも感心している。


ドレアスは言った。


「感心していないで、お前たちも参戦しろ。3対1でいく」


「わかりやした!」


「ひゃははは、了解だぜドレアスさん!!」


とジルが応じてから、私に言ってきた。


「ぶっ殺してやるぜ、セレナァ? 決闘んときの仕返しだァ」


次の瞬間。


ジルが私に向かって突っ込んできた。

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