第4章69話:フクロウ
その日からしばらくジルを警戒しながら過ごした。
が……
ジルは復讐しにくる様子もなく、ただ月日が流れた。
秋。
山の木々に紅葉と黄葉が生い茂る季節。
私はのんびりと【
「ん……」
そのときだった。
ふと視界に、とある生物の姿が目に入った。
フクロウである。
目の前の樹木の枝のうえに、留まっていたのだ。
素朴な表情でこちらを見ている。
ふふ、可愛いな。
森だから、こういう自然生物にはよく出くわす。
私はエサをやりたいと思い、チョコレート魔法でチョコを生成した。
フクロウが食べられるサイズのチョコである。
「ほら、お食べ」
樹木の根元あたりに、チョコレートを投げる。
するとフクロウが、枝から飛び降りた。
チョコレートを食べ始める。
(フクロウって、チョコレート食べるのかな?)
と、いまさら思うが……
現に食べてるのだから、それが真実なのだろう。
フクロウがチョコレートを完食する。
「もっと欲しいですか? いいですよ」
と、私はチョコレート魔法でさらにチョコを作り、2、3個、放り投げる。
フクロウがそれをついばんで食べる。
はぁ……和む。
いいね、こういうの。
まったりしてて。
「ん……」
そのときフクロウが飛んだ。
バサバサと翼をバタつかせ……
なんと、私の頭の上に着地した。
「……」
えっと……
これは、どう解釈すればいいんだろう?
「そ、そこは止まり木じゃないです、よ……?」
と言ってみる。
「ホー、ホー」
とフクロウが鳴いた。
うーん。
コレもしかして、なつかれた?
(フクロウになつかれるとは……)
と私はおどろく。
でも、まあいいや。
フクロウ、可愛いし。
私はそのまま立ち上がり、山小屋への帰路を歩いた。
山小屋へたどり着くまで、フクロウはずっと私の頭上に、とどまり続けていた。
そして。
山小屋にたどりつく。
この数か月のあいだに、大工さんの手によって山小屋はすっかり修復されている。
「ん……」
そのときフクロウは、いきなり飛び始めて。
山小屋の屋根の折り返し部分―――いわゆる
「そこも止まり木とは言いがたいけど……」
しかし自分の定位置を見つけたらしい。
フクロウは、そこから動かない。
この場所こそ、自分の居場所だといわんばかりに、
「ホー、ホー」
と、のんきな鳴き声をあげた。
「まあ、いいか」
と私は微笑んだ。
そのとき、井戸のほうから、クレアベルがやってきた。
水汲みをしていたらしい。
クレアベルは、私の視線の先を見て、言った。
「フクロウ、か……あれは、トキフクロウだな」
「トキフクロウ?」
「時を告げるフクロウだよ。決まった時間に、大きく鳴いたり、鳴かなかったりするんだ」
「ふーん……」
なるほどね。
そういう習性のフクロウなのか。
私は思いついたので、ぽつりとつぶやく。
「じゃあ、トキちゃんですね」
命名、完了だ。
こうしてトキフクロウが山小屋に住み着くことになった。
和やかな1日が終わっていく。
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