第4章67話:逃亡

かくして私たちはチョコレート・ハウスで暮らし始める。


後日、窓ガラスも購入して、窓つきのチョコレート・ハウスとなった。


さらに数日後。


チョコレート・ハウスに来客があった。


ライネアさんである。


玄関前で、私とクレアベルが応対する。


「ライネア団長……わざわざキトレル山まで参られるなんて、どのようなご用件で?」


とクレアベルが尋ねた。


ライネアさんが答える。


「実は、恥ずかしい話なのだが……ネリアンヌの部下である、ジルに逃げられてな」


「!?」


私は驚愕する。


クレアベルは目を細める。


「ジル……というと、たしかセレナが先日、決闘で戦った相手ですか」


「そのジルだな」


とライネアさんが肯定した。


私は尋ねた。


「ジルさんが脱獄したんですか?」


「正確にいえば牢屋に入る前に逃げたから、脱獄……ではなく脱走だ」


ライネアさんがそう訂正する。


さらに告げた。


「ジルは、セレナさんと決闘をして敗北したと聞く。だからセレナさんに因縁があって、ここを訪れたのではないかと思ったのだが……その様子だと、ここには来てないようだな」


「はい。ここを訪れたのは、今のところ団長だけです」


「そうか」


空振りとわかってライネアさんが、少し残念そうに肩をすくめる。


クレアベルが尋ねる。


「ちなみにネリアンヌ嬢のほうは、脱走してはいないのですか?」


「ああ。ネリアンヌ嬢も、ひどく暴れてはいるものの、ジルほど取り押さえるのに苦労しないからな」


「なるほど」


とクレアベルが納得する。


まとめると、逃亡したのはジルだけらしい。


(うちを襲撃しに来たら面倒だね……)


と私は静かに目を細めた。


内心で、ジルへの殺意を高める。

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