第3章51話:攻撃

怒気を帯び始めるジルの顔。


しかし直後、ジルは静かに笑い始める。


「くく、ククク! はははははは!」


ジルが告げた。


「なるほどな! 俺に決闘を挑んでくるだけあって、多少はデキるみたいだな。いいぜ面白え! だったら少し本気で攻撃してやるよ。当たり所が悪くて、死んじまっても恨むなよ?」


いや、決闘相手を死なせちゃダメでしょ。


とツッコミたかったけど、ジルがそのまえに攻撃を仕掛けてきた。


「オラアァッ!!」


拳だ。


速い。


しかし、私は回避する。


「ハハ、回避が甘え!」


ジルの二手目の攻撃。


それは回避できず、私は頬にパンチを食らってしまう。


「オラァッ! どうした! 反撃してみろや!!」


横に殴られる。


あごを蹴りあげられる。


拳骨で頭部を打たれ……


前蹴りを食らう。


殴られ、蹴られ続ける。


「弱え!!」


ジルが蹴り飛ばしてくる。


「ひゃははははは!! 威勢がいいのは最初だけかよ!!」


さらにジルは殴り、殴り、殴り。


私を蹴り飛ばす。


だが。


「あのー」


「!?」


ジルが攻撃の手を止める。


私は尋ねた。


「これがあなたの本気ですか?」


「なっ……」


20発以上、殴る、蹴るの攻撃を受けていた私。


しかし、ピンピンしていた。


全くダメージを受けていない。


「全然痛くないですね。正直、眠たくなってきました。こんなのが『本気』って、あなた実は弱いんじゃないですか?」


「ッ!」


ジルが憤怒ふんど形相ぎょうそうを浮かべる。


そのとき。


私は自分の間違いに気づいた。


ジルがさっき口にした言葉はこうだ。





『だったら、少し本気で攻撃してやるよ。当たり所が悪くて、死んじまっても恨むなよ?』





そう。彼は『本気』で攻撃していない。


少し本気、で攻撃してきたのだ。


そこは訂正しておかないといけないね。


「あ……まだ本気じゃなくて『少し本気』でしたね? いま本気の50%ぐらいですか? じゃあいいですよ、100%になってくれても」


「なにッ!?」


「あなたの攻撃なんて、50%だろうが100%だろうが、大して変わらない気がしますから」


私の言葉に、ジルが血管を浮きあがらせる。


「テ、テメエ……ナメやがってッ!! いいぜ、もう手加減はナシだ! 望みどおり本気で相手してやるよッ!!!」


とジルが宣言した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る