第3章44話:宣告

<ルチル視点>


モント村。


シェニルさんは、私たちの滞在をこころよく引き受けてくれた。


卵屋・シェニルの店で、私とアイリスは過ごす。


ちなみにこのとき。


シェニルさんや村人たちにネリアンヌのことをいろいろ聞いた。


そんなに多くのことがわかったわけではないが……


とりあえずネリアンヌのフルネームは、ネリアンヌ・メルディナだとわかった。


あと、ネリアンヌはこの【メルディナ伯爵領はくしゃくりょう】を治める、メルディナ家の長女ということも。


しかも嫡子ちゃくしであり、次期領主の筆頭候補だという。


(あんなのが領主になったら、世も末だよね)


と私は思った。






シェニルさんの家で日々を送る。


5日ほどは平穏だった。


しかし6日後。


平穏は崩れ去る。


なんとネリアンヌが、モント村へとやってきたのだ。


ネリアンヌは、私のことを探しているらしい。


シェニルさんの店に私がいることは、村びとに知れ渡っている。


私はすぐにネリアンヌに発見されることになった。


「ふーん。やっぱり村にいたのね」


シェニルさんの家の前で、私はネリアンヌと向かい合う。


私の後ろにはシェニルさんとアイリスが立っている。


ネリアンヌの後ろには、5人ほどの護衛がいた。


ネリアンヌが言う。


「久しぶりね、セレナちゃん?」


「……はい、お久しぶりです」


と答える。


ネリアンヌは嫌味な笑みを浮かべながら言った。


「あなたに用があって来たのよ」


「御用、ですか?」


「ええ。あなたを処刑することにしたわ」


「……!?」


処刑。


確かにそう言った。


マジか。


シェニルさんやアイリスも息を飲む。


私は尋ねた。


「しょ、処刑の理由を、お聞かせいただいても?」


「決まってるでしょ。あなたが私に刃向かったから」


刃向かったというのは、きっと街でのことだろう。


ネリアンヌが男性をいたぶってるところを、私が制止した。


それを刃向かった、と認識しているのだろう。


「あれは、刃向かったわけでは」


「言い訳は結構よ。私が処刑するといったら処刑する。黙って従ってればいいの」


有無を言わさぬ様子だ。


「今すぐ、ここで処刑をおこなうわ。せっかくの見世物だし、村人も呼んで、全員で見てもらいましょう」


「お、お姉ちゃん……」


とアイリスが不安げな声をあげる。


まさかいきなり処刑を申し渡されるとは思っていなかった。


私は、どうすればいいか必死で思案した。

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