第3章45話:怒り

と、そのときだった。


「おいネリアンヌ」


「なによジル」


ジルと呼ばれた男が、言った。


「処刑の前にアレを見せてやりたいんだが?」


「……ああ」


とネリアンヌがあくどい笑みを浮かべる。


嫌な顔だ。


私はぞくりとした。


アレとは何だ?


ジルが、アイテムバッグから何かを取り出す。


それは―――木の板だった。


見覚えのある板。


私たちが住む山小屋の……壁に使われている木材。


「見覚えがある顔だな?」


ジルが言う。


「そうだ。これはお前たちの家、あの山小屋の壁材かべざいだ。なぜこれが俺の手にあるか、教えてやろうか?」


ジルが笑いながら、告げた。


「それはだなぁ! お前たちの山小屋を、俺様おれさまがぶっ壊してやったからだよ!!」


……え?


いま、なんていった?


私たちの家を、壊した?


そういったのか?


ジルは叫ぶように言う。


「せっかく俺が、テメエらの家を訪ねたのに、留守だったからよォ。ムカついて倒壊させちまったんだわ。すまねーな?」


「……っ」


アイリスが涙ぐむ声をもらす。


私は、呆然と立ち尽くす。


ジルは笑った。


「あははははは!! そうだよ、その顔! テメエらみたいなゴミの、そういう顔が見たくて、この板をわざわざ持ってきてやったんだよ!」


ジルが山小屋の板をこちらに投げつけてくる。


私の身体に板はぶつかり、地面に落ちた。


ひとしきり笑ってから、ジルは言った。


「はー、満足した。もういいぜネリアンヌ? 処刑するならどうぞ」


「ええ、なかなか愉快な一幕ひとまくだったわよ。褒めてあげるわ、ジル」


……ふざけるな。


私は怒りに打ち震えた。


このまま、黙って処刑されてればいいのか?


……いいわけがない。


私は告げた。


「あの、ネリアンヌ様」


「……? 何かしら?」


「あなたに決闘を挑ませていただきます」


「……!」


ネリアンヌが目を見開いた。

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