第3章34話:盗賊2
私は悠然と歩き……
盗賊たちと15メートルぐらい離れた位置に、立ち止まる。
「なんだ、ガキか」
と紫髪の女盗賊がふっと微笑んだ。
ザカル以外の盗賊たちが警戒を解く。
私は告げた。
「あの、あなたたち盗賊ですよね? この山で悪だくみは――――」
許しません、と言いかけたそのときだった。
ドシュッと鈍い音がする。
……え?
自分の身体を見下ろした。
大きな穴が開いていた。
私の腹に。
その穴はどうやら、貫通して、背中まで貫いているようだった。
私は……倒れる。
「ザ、ザカルさんがやったんすか?」
と赤髪の男が尋ねた。
「ああ」
とザカルが短く肯定する。
紫髪の女が言った。
「でも、相手はガキですよ?」
「だからなんだ? ガキだろうとなんだろうと、俺たちのことを知ったやつは殺しておくべきだ」
ザカルがそう告げる。
赤髪の男が納得しつつ、疑問を呈した。
「なるほど。……あ、でも今回のターゲットもガキですよね? ひょっとすると、こいつのことじゃないんすか?」
しかしザカルが否定する。
「いや……ターゲットのガキは黒髪らしい。いま殺したコイツは茶髪。おそらく別人だ」
チョコレート魔法の影響で茶髪に変わっただけで、先日まで黒髪だったのだけどね。
青髪の女盗賊が言った。
「それにしてもザカルさんの攻撃、全然見えなかったわ。今のが【
「そうだ」
ザカルの右手には、いつの間にか
そのダガーを振るだけで、剣の風圧を飛ばし、遠くにいる敵に斬撃を浴びせることができる――――
それがザカルの能力のようだ。
赤髪の男が言う。
「めちゃくちゃカッコいいっすね! この距離からでも瞬殺なんて!」
すると、ザカルは鼻を鳴らしてから言った。
「大したことじゃない。それより、ターゲットの話に戻るが――――」
「いやあ、びっくりしちゃいましたぁ!」
と、倒れた私は起き上がる。
盗賊たちがビクっとした。
全員が、驚愕に目を見開いている。
私は言った。
「身体に穴を開けられた経験がなかったので、一瞬、死んだかと思いました」
「お前……なんで生きてやがる? 致命傷だったはずだ……!」
ザカルが焦ったように聞いてきた。
なんで生きているのか?
カンタンなことだ。
私は答える。
「チョコレートだからです」
「……は?」
「チョコレートは死なないんです!」
そう。
チョコレートは穴を開けられたぐらいで死なない。
チョコレートに、死という概念は存在しないからだ!!
……。
……あれ?
それってつまり。
私、
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