第3章29話:街3

本屋を出たあと……


カフェで休んでいくことになった。


軽食とお茶を楽しむ。


休憩したのち、私はもうちょっと街をぶらぶらしたいと思った。


一方、クレアベルとアイリスは、歩きつかれたので、もう少しカフェでゆっくりしていくとのこと。


なので、私一人で街をめぐることになった。


「ふんふんふん~」


と鼻歌をうたいながら、私は街を歩く。


街の露店を眺めたり、街の風景を眺めたりするだけでも、楽しい。


異世界の街で、のどかで綺麗だからね。


歩いているだけで、気分が上向うわむいてくる。


……が。


そのときだった。


「お、お許しください!!」


と悲鳴じみた声が聞こえてきた。


視線を向ける。


大通りからいける横道の路地。


そこに、ちょっとした人だかりができていた。


何事かと私も近づく。


「許すわけがないでしょう? あなたは、この場で処刑するわ」


「しょ、処刑!!?」


なにやら貴族令嬢っぽい女性に。


庶民の男性が土下座して、謝罪している様子。


いったい何があったのか?


私は、遠巻きに見つめるギャラリーの一人に聞いてみた。


「あの、何があったんですか?」


「あん? ああ、あそこで謝罪してる男が、さっき曲がり角で、ネリアンヌ様と肩がぶつかったんだと」


とギャラリーのオッサンが答えてくれる。


私はぽかんとした。


「……は? ぶつかった?」


曲がり角でぶつかった……


それだけ?


と、私は思ってしまう。


私は聞いた。


「そんなことで、騒ぎになってるんですか? いま『処刑する』とか言ってましたよね?」


「……ここだけの話だがよ」


とオッサンは小声で教えてくれる。


「ネリアンヌ様は、気性の荒いお嬢様なのさ。くだらない理由で、庶民を処罰するなんて日常茶飯事だ」


へえ……


いわば悪役令嬢というやつか。


私は、ネリアンヌに目を向ける。


きつい目つきをした女性。


年齢は15歳ぐらいだろうか。


髪は青色でツインテールの髪型、かつ縦ロール。


目は瞳が黄色であった。


服はブラウス、きらびやかなコルセット、スカートである。


なお、ネリアンヌの背後には、護衛とおぼしき屈強な戦士たちが控えている。


(ぶつかっただけで処刑をチラつかせられるのか。怖いな)


あの庶民の男性が、気の毒に思えた。


とそのときだった。


「私にぶつかるような、どうしようもないクズ庶民は、こうしてあげる!!」


とネリアンヌは、男性の顔を蹴りつけた。


「がっ!!?」


顔をおさえてうずくまる男性。


その身体をネリアンヌが踏みつけたり、頭を踏みつけたり。


やりたい放題する。


10発ほど踏んだり、蹴りつけたりしてから、ネリアンヌは言った。


「蹴ってばかりじゃ、処刑にならないわね」


ネリアンヌが微笑む。


「やっぱり刃物を使わないと」


そう述べてから、なんと彼女は、アイテムバッグからショートソードを取り出した。


ギャラリーが息を飲む。


おいおい……


さすがにそれはダメでしょ。


本当に殺す気か?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る